発行物

「wamだより」VOL.27(2014.7)

以下は、「wamだより Vol.27」(2014.7)に掲載した文章です。


「集団的自衛権の行使容認」が連れてくる社会

池田恵理子(wam館長)

wamだより27号特定秘密保護法によって国民の「知る権利」も「表現の自由」「集会・結社の自由」も大幅に狭め、憲法9 条を空文化して「集団的自衛権」の行使容認を閣議決定してしまった安倍政権。国民の権利が制限される一方で、政府にはフリーハンドが与えられたことになります。ファシズムの到来です。時代の空気を先読みして増長する右翼団体とそれを煽る右派メディア、そして自己保身の事なかれ主義が蔓延する社会…。何という時代でしょう!

7 月6 日、wamのある早稲田奉仕園では、日本キリスト教会館とキリスト教視聴覚センターに事務所を置く団体に、民族差別と憎悪を煽動する右翼団体のデモが「反日の牙城」「朝鮮カルト」などと叫びながら、「突入」しようとやってきました。敷地内の諸団体は警戒態勢をとって事なきを得ましたが、日本社会の右傾化に歩調を合わせてこんな輩が出てくるのです。ただ、もっと怖いのは、右派メディアの魔女狩り的な報道と各地にじわじわと広がる自粛や相互監視、そして諦めと沈黙です。

広島大学のように、授業で「慰安婦」を教えて右派メディアの標的にされる事件が東京の高校でも起こっています。安倍首相の“悲願”が改憲だからか、憲法記念日には自治体の自粛が目につきました。神戸市と市教育委員会では、内田樹氏の憲法集会の後援を「政治的中立性を損なう恐れがある」と断りました。6 月、明治大学では安倍政権批判の集会の会場使用を、開催1週間前に取り消しました。大学側は、右翼の街宣車が押しかけたり、警備が必要になるからだと弁明しています。

7 月4 日には、さいたま市の「公民館だより」に、集団的自衛権に反対する女性の俳句、「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の掲載が拒否されたことがわかりました。公民館長は「世論が分かれる問題で、一方の意見だけを載せられない」と説明しています。これは明らかに表現の自由の侵害ではないでしょうか。

メディアも深刻です。6 月29日、東京・新宿で60代の男性が集団的自衛権に抗議して焼身自殺を図りました。この事件はネットで注目されましたが、翌日の朝刊では社会面の小さなベタ記事、民放も短いニュースで報じただけで、NHKは一切、取り上げませんでした。一方、欧米のメディアの扱いは大きく、日本での報道が極端に少ないことを記事にしています。「自殺報道は後追いを配慮して自制すべし」と言われますが、社会への抗議の自殺を軽視・無視するのは問題です。自殺という抗議の仕方には賛成できませんが、この報道自粛には、集団的自衛権の行使容認を何とか世論に認めさせたい安倍政権と、政権を忖度するメディアの現状が浮き彫りになったように思いました。

特定秘密保護法の番組を1 回も放送しなかったNHKの「クローズアップ現代」は、集団的自衛権でも沈黙していましたが、7 月3 日、菅義偉官房長官が単独出演する番組を放送。「政府見解のリピートか」と思ったものの、国谷キャスターが鋭い質問を浴びせていたのが印象的でした。ところがこれに官邸が激怒、慌てたNHKは平身低頭で籾井会長が詫びを入れた…と週刊誌が報じました。政府要人へのインタビューは、「おとなしく聞いていればいい」ということでしょうか。

「慰安婦」問題に長く関わって戦争の怖さを実感してきた者は、このような状況にNo! と言って、抵抗し続ける義務がある…と思っています。


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