発行物

「wamだより」VOL.32(2016.3)

以下は、「wamだより Vol.32(2016.3)に掲載した文章です。


wam10周年記念トーク・イベント
歴史は消せない 日本軍「慰安婦」の記録と記憶~これまでとこれから

日本軍「慰安婦」問題をめぐるこの10年とwamの活動

池田恵理子(wam館長)

vol-32_10th-1wamの10 年を振り返ると、戦争加害に向き合ってこなかった戦後日本社会の姿が浮かびあがってくるようです。

1991年に金学順(キムハクスン)さんが「慰安婦」被害を告発し、各国の女性たちが次々に名乗り出ましたが、日本がこの問題に向き合おうとしなかったため、彼女たちは日本政府に謝罪と賠償を求める10件の裁判を起こしました。その過程で、多くの市民や研究者、弁護士によって聞き取り調査と資料の発掘が行われ、「性奴隷制」と言わざるをえない日本軍「慰安婦」制度の実態と全貌が明らかにされたのです。日本政府は2 度の調査を行い、1993年に河野官房長官談話を発表します。しかし、90年代半ばからは歴史修正主義者の攻撃が激化しました。彼らの標的は教育と報道でした。1997年度版の全ての中学歴史教科書に載ってしまった「慰安婦」記述を削除させる運動が始まり、「慰安婦」報道も激減します。

2000年12月、「慰安婦」制度の実態と責任者を明らかにしようと、加害国と被害国の市民が立ち上がり、東京で民衆法廷「女性国際戦犯法廷」を開催しました。海外メディアはこれを大きく報じましたが、国内メディアは消極的でした。特に法廷を取り上げたNHKの番組「ETV2001」は惨憺たる内容でした。法廷の主催団体、VAWW-NETジャパン(当時)はNHKを提訴。NHK職員の内部告発により安倍晋三議員などの政治介入で番組が改変されたことが、審理の途中で明らかになりました。

wam設立のきっかけはこの女性国際戦犯法廷でした。法廷の発案者だった松井やよりさんは2002年の秋、末期ガンと宣告され、「遺産と資料を託すから資料館を作って」との遺言を残し、同年12月に亡くなりました。彼女の遺志を引き継いだ仲間たちが2005年8月、wamをオープンしたのです。

wamのコンセプトは「被害女性の一人ひとりに出会える場」。特別展の目玉は、被害女性を一人ずつA1サイズ(60×84cm)のパネルで紹介する「個人パネル」です。そこには彼女たちの生い立ちから少女時代のこと、性暴力を受け、「慰安婦」にされた時のこと、戦後の生活と現在までがぎっしりと詰め込まれています。こうしたパネルは各地に貸し出され、中には翻訳して、海外を巡回しているものもあります。パネルをきっかけに多くの人が被害女性の体験と人生に触れて、そこから性暴力とは何か、戦争とは何かを知り、考えようとする。その人が亡くなった後でも、彼女たちを伝えていく場でありたいと願って私たちは運営を続けています。

これまでに様々な国際機関の勧告、各国議会の決議、国内各市町村の議会の意見書が出され、日本政府に対して「慰安婦」問題に取り組むよう求めてきましたが、政府は全く聞く耳を持ちません。その上、メディアが「慰安婦」報道を自粛していることもあって、政治家や右派の論客たちの嘘がそのまま流通しているのが現状です。こんな時代だからこそ、私たちは多くの人びととこの問題を共有するために、各地で被害者の声を伝えようと闘っている人たちと連帯し、ジャーナリストたちにも情報を提供して、報道の応援もしていきたいと思っています。

日本軍「慰安婦」制度の犯罪性を暴き、責任の所在を明確にし、加害者を処罰しなければ、現在も紛争地で続く戦時性暴力をなくすことはできません。こうした一連のことは、被害女性たちのPTSDからの回復にも、極めて重要です。また、自国の戦争責任を問うことは、自らの戦後責任を果たすことでもあります。一人でも多くの被害女性が存命のうちにこれらの責任を果たすべく、ともに歩んでいきましょう。



開館日・時間

水〜日曜日 13:00〜18:00

閉館日

月・火・祝日・年末年始
※団体でのご来館については事前にご連絡ください。
※展示入れ替え期間は休館です。

入館料

18歳以上:500円
18歳未満:300円
小学生以下:無料
※障がいのある方の付添いは無料。

住所

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〒169-0051
東京都新宿区西早稲田2-3-18
AVACOビル2F
Tel: (03) 3202 4633
Fax: (03) 3202 4634
E-mail: wam@wam-peace.org
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