記載内容 | 戦地に派遣されている日本軍の部隊には、将兵のセックス処理機関として十数名の慰安婦からなる慰安所が、民間人のオヤジか女将に率いられて付随していた。大別すると日本人、朝鮮人、中国人、現地人の女性たちで組織されていた。・・・私の所属する連隊には、朝鮮の女性たちと中国の女性たちからなる二組の慰安所が設けられていた。・・・野戦病院にIという薬剤官の中尉がいて、朝鮮の慰安婦にすっかり熱を上げてしまい、日中の病院の勤務を終えると、慰安所の彼女のもとに行き、翌朝出勤してくるのであった。将校には営外居住というのが認められているから、兵営の外に住むことができるので、慰安所から通って来ても別に違法ではない。しかし、他の将校の手前もあり、あまり褒められた行為ではなかった。・・・慰安所をねぐらにして病院に通わせるのは、何としても外聞が悪い。いっそ慰安所に彼女が背負っている借金を2人が分担して支払い、彼女の籍を慰安所から抜かし、結婚させてはどうか。結婚させ、彼女を病院付の見習看護として勤務させてはどうかということになった。将兵の妻となるには、所属団体長の許可を必要とし、一応良家の婦女子であることを建て前としていたが、戦地でもあり、朝鮮女性といっても、日本国籍はあるのだし、看護婦という聖職であれば差し支えあるまいという粋な計らいであった。・・・しかし、彼らの蜜月は長く続かなかった。1年もたたぬうちに連合軍が大挙して押し寄せ、3ヵ月にもなんなんとする激戦の果て、粋な計らいをしてくれた病院長O少佐は戦死し、相思相愛の2人も離ればなれになったのである。 |