記載内容 | 花子はニンニクを潰したものを味噌であえていた。すべての仕度を終えると、花子は手を浄め、懐から2枚の写真をとりだして、タンスの上に並べた。その写真の前に、花子は酒とニンニクの味噌和えを供え、今度こそ本当に泣きだした。・・・問いただしてみると、花子は泣きわめいて、私は日本人なんかじゃないんだ、「朝鮮ピィ」だ、日本人は鬼より悪いヤツだとののしった。私は本土の女とばかり思っていたので、「朝鮮ピィ」ときいてびっくりした。そしてよくよく聞いてみると、花子には日本軍のために自殺した姉が1人いて、写真の白い看護婦姿は、花子とその姉の若い日の姿であった。花子の姉には婚約者がいたが、日本軍に徴用され、そのため姉も野戦看護婦として志願することになった。そしてほかに親類もなく花子1人残るのは淋しいので、共に志願したのだという。看護婦学校でひと月学んだ後、「満州」へ派遣された。そこで10日ほど仕事をしていると軍医から5,6日軍人の慰問にいくようにと命令をうけた。そこへ行ってみると、慰問とはまさに日本軍人の慰み者になることであった。花子姉妹をはじめ、何人もの朝鮮女性たちがその夜からむりやりに慰安婦にさせられた。花子も姉もその夜、生れてはじめて男を知ったのだという。姉はそれから3日目に投身自殺をした。姉は婚約者にすまないといい、日本人を心から憎み呪って死んでいったという。花子は自分は意気地がないから、日本軍に身を汚されても死ぬことができなかったと口惜し涙を流していた。 |