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資料の詳細

出典種別 兵士の回想録等
現在の地域情報北マリアナ諸島 グアム島
資料にある地域情報グアム アガナ街
慰安所があった時期
記載内容それから、どのくらいの時が流れたか。私は、ふと上方に女の声を聞いた。「おじさん、あたいたちも、はいらせて……」せっぱつまっての哀願だった。私は、反射的に顔を上げた。若い女が2人、穴の縁に立ってのぞき込んでいた。「駄目だよ。この中は狭いんだ」・・・「おじさん、そう言わんと、助ける思って……」女たちはそう言うが早いか、強引に穴の中へ飛び降りてきた。激しい砲撃が依然としてつづいていた。女たちは最前の私と同じように危険に曝されていた。その危険感が否応なく、彼女たちを穴の中へ飛び込ませた。生理的、本能的な衝撃が、私の拒否を無視させたのだ。「困った奴らだなあ」私は腹立ちまぎれに悪態をついたが、そのときすでに、私の心からは、拒否の感情が消え失せていた。私は、この場合、彼女たちを頑強に拒否するほど個我に徹しきれる男ではなかったが、それと同時に飛び込んできた2人の女のうちの1人が、まんざら、無縁の女でないことに気づいたからである。女は2人とも、黒いニッカースをはき、赤い半袖の防暑衣をつけていたが、そのうちの1人、丸顔で小肥りの女が、春子という慰安婦だったのである。春子ー私にとっては、ほんのゆきずりの女だった。島の中心地、西海岸中央部のアガナ街にあった「あかし」というあいまい屋で、交合の時間を含めてわずか1時間ばかりつき合った女。私は、この島へ着いてから好んで、スペインの血の混じった土民女のいる魔窟へ足を向けていたが、あるとき、ふと、日本女の肌に触れてみたくなった。・・・私は、内地の女を求めてアガナ街の裏通りを歩いた。そして、「あかし」で売れ残りの春子を発見した。春子は、和歌山県の生まれで、半年ばかり前、島へやってきたといったが、それ以上は明かさなかった。
証言者堀川潭
証言者属性
部隊名
資料タイトル悲劇の島-記者の見た玉砕島グアム
著者、公文書発信者など堀川潭
公文書宛先
発行日2002.12.16
発行所光人社
ページ30-35
出典備考単行本は『玉砕島』1966.5、弘文堂
備考 現在の地図のグアム島の中央部、北海岸にハガニアHagåtñaがある。ここがアガナと思われる。アガナは、アガニヤ、アガニア、アガニャ、ハガニアなどとも呼ばれていた。
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