出典種別 | 兵士の回想録等
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現在の地域情報 | 北マリアナ諸島 グアム島 |
資料にある地域情報 | 明石(アガナ) |
慰安所があった時期 | |
記載内容 | 明石市に着いた連隊は、現地の建物や島民の家屋を接収して、ひとまず休息をとった。私は、床が1メートルほど上がったスペイン風の豪壮な邸に医務室を置いて、ここに住みこんだのである。内部にはシャンデリアが天井から下がっており、内地ではとても見られない大きな冷蔵庫が備え付けになっていた。「こいつは豪勢だ」と私は、おおいにご満悦だった。当面、連隊は何もすることがなかった。将校ともに1日中ゴロゴロしていたのである。2、3日もすると、まだ外出もしないのに兵隊たちは、ピー屋は坂の上にあるそうな、などと、どこから聞いてくるのかたちまち噂がひろまっていた。応急派兵で、あわただしく上陸したというのに、すでに兵隊相手の女郎屋が開設されているのは一驚だった。私も当時は若かった。少なからず興味を抱いて、ある日の午後、ぶらりと街に出たついでに、噂の場所へ足を運んでみた。エキゾチックなたたずまいを見せているメイン・ストリートを東に歩いて行くと、大きな三叉路があり、その角に米軍時代からの白い平屋建ての病院があった。いまは海軍病院になっていた。メイン・ストリートに沿って、さらに富田の飛行場方向に坂を上がってゆくと、左側に目ざす女郎屋が建っていた。あまり綺麗でない、2階家の階段を上ろうとすると、2階の窓からのぞいていた娼婦が、「将校さん、ここは兵隊専用だよ。将校さんのは別にできているよう」と叫んでくれた。ちょっとバツが悪い。 |
証言者 | 吉田重紀 |
証言者属性 | 日本軍兵士・軍医 |
部隊名 | 第29師団歩兵第38連隊第3大隊 |
資料タイトル | 孤島戦記 若き軍医中尉のグアム島の闘い |
著者、公文書発信者など | 吉田重紀 |
公文書宛先 | |
発行日 | 2005.12.14 |
発行所 | 光人社 |
ページ | 47-48 |
出典備考 | 単行本は『慟哭の孤島 グアム玉砕の記録』1981.3.15、広済堂出版 |
備考 |
明石市はグアム島の中部付近にあるアガナ(アガニア、アガニャ、アガニヤなどとも呼ばれた)のこと。地図「グアム島概要図」に日本名と現地名が記されている。
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