出典種別 | 兵士の回想録等 |
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現在の地域情報 | 黒龍江省 黒河市 愛輝区 |
資料にある地域情報 | 東北 源利(ソ連国境) |
慰安所があった時期 | 1944年春 |
記載内容 | ソ満国境に近い源利という処、ふりそそぐような北極に近い青い星座、不寝番が時折裏山の野火を消しにゆく。原始林の木と木が春の突風に触れあって火を吐くという野火、山火事、限りない白煙、りすがいて、わらびが生えて郭公が啼く。それだけでも十分に日本の郷愁をそそる春の山だった。営門を出て三町ばかり楡の木立の中に、こわれかけたようなアンペラ小屋がある。半島出身者ばかりの慰安所であった。下士官以上の専用なので、妻帯者ばかりの老兵達の性欲を、限りなく責めたてるのだった。けばけばしい源氏名の数々、今はもう忘却の彼方にある。みどり、あけみ、桃太郎等々のあどけない娘達、安香水、二人用の枕、水白粉の壺、姫鏡台に、はなばなしいばかりの模様の支那布団、燭台、ランプなど、櫛渕師団長の簡閲の前で「アムール超えて野を越えて貴様等、われといざ征かん」と大見得を切った馬上のあごひげゆたかな大隊長は彼女等の得意様であった。彼女等のいうカタコトの「伍長見習」は軍医見習の候補生のわれわれであり、若き彼女等の豊かな肉体の谷間を、秘められたしげみの中をかきわけて検梅や身体検査等をした。これが老准尉書く軍隊手帳にいかめしい国境警備という記録となった。 |
証言者 | 上窪清 |
証言者属性 | 日本軍兵士・医療担当者 |
部隊名 | 68連隊(岐阜) |
資料タイトル | 第三師団郷土部隊史 |
著者、公文書発信者など | 郷土部隊史保存会 |
公文書宛先 | |
発行日 | 1967.12.8 |
発行所 | 郷土部隊史保存会 |
ページ | 251-252 |
出典備考 | 上窪清「つわ者の夢の跡 綴る「慰安所の事など」」 |
備考 |
現在の地図の黒竜江省北部、アムール河の西岸沿いに黒河市がある。愛輝区は黒河市の北側である。テキサス大学図書館公開の旧満州地図に源利Yuan-liがある。源利は当該地図の左右4・上下2の位置にある。グーグルマップの同所には源利見えず。したがって上位行政区画である愛輝区でとった。テキサス大学の当該地図は以下を参照のこと。 http://legacy.lib.utexas.edu/maps/ams/manchuria/txu-oclc-6614368-nm52-4.jpg |