記載内容 | そこはカバンジェヘというスマトラ中部高原にある町だった。そこから7キロほどのところに、ブラスタギと呼ぶオランダ人達の避暑地があった。そこは立派な洋館の別荘が松林の丘の斜面に点在して、今も第三国の白人達が少し住んでいた。・・・連隊本部と、第一、第二大隊という私達の部隊の主力がその地に駐屯していた。・・・連隊本部はじめ、部隊の兵舎は、町の北側の小高い丘の松林の中に点在した。もとからある建物を最大限に利用し、足りないところは急造の木造の兵舎を作ってあった。私の中隊は部隊の西の端にあり、兵舎はオランダ人用の小学校の建物を利用していたので、洋館のしゃれた2階建てだった。・・・兵舎との間にある道はブラスタギへぬけて、主都のメダンまで行く公道だった。だから、民間の通路にもなっていて、住民達が通りぬけたので、なんとなくおだやかな感じがした。そこからその道の反対方向は坂になって町へおりて行っていた。休日には兵隊達はその町へ外出するのだが、映画館が一つあるだけで、大したものはない町だった。それでもレストランや中華料理屋などがあるので、少しは気休めになったろう。ただその町の外れに、やはり松林のあるオランダ人の宿舎があって、そこが軍の慰安所になり料理屋と女の家になっていた。休日に兵隊はそこへ出かけた。夜になると下士官や将校も行ってよかった。 |