証言,公文書等,様々な文書を徹底調査

資料の詳細

出典種別 兵士の回想録等
現在の地域情報モン州 モーラミャイン県 モーラミャイン郡区
資料にある地域情報モールメン
慰安所があった時期1944年
記載内容私が宿舎に戻ると、山中上等兵は昨日の夜とはうってかわった元気な顔で私を見て、にこにこ笑った。「岩本、いい所につれて行くから準備しろよ」私は答えをためらう。「分隊長から許しをもらったのだ。付いてくればいいんだ」〈いい所〉というのは、まちがいなく慰安所のことにちがいない。古参兵の命令は、中隊長の命令よりもっと逆らいがたい。・・・私は今モールメンのどこを歩いているのか知るはずもなかったが、街には人の気配は殆ど感じられなかった。・・・市街地を離れると広い草原になり、はるか向こうの少し高い所に黒塗りの大きな木造の2階建てが見える。「あそこにおなごどもがおるんじゃ」もともといかなる建物なのかは知らないが、現在は慰安所に使われているらしい。建物は1階建てとかわらず、階下は木の柱だけが見える。我々3人は建物の裏側に来たらしい。木の柱の間を潜って玄関の階段の方に廻る。階段の下の小さな事務室の窓口には誰もいなかったが、窓口の上の方の板壁には名札がかかっていた。名札には黒字に白いエナメルで、椿、春江、貞子などと日本式の女の名が書かれていた。私はこれは日本ピーではないかと思ったが、階段の上に先にかけあがった山中がこう叫んだ。「約束どおり朝鮮人兵を連れてきたぞ!」階段の上は広く長い廊下であり、廊下に沿って一方は部屋が並び他方は木の窓があった。山中は初めてではないらしい。「どこだ、どこだ」と、いきなり現われた女達がいっせいに、ちょうど階段をあがった私を取り囲む。・・・私は同族の女性とこんな具合に顔を合わせるのは生まれて初めてであった。
証言者李佳炯
証言者属性朝鮮人日本軍兵士(学徒志願兵)
部隊名狼山砲第2大隊
資料タイトル怒りの河 ビルマ戦線狼山砲第二大隊朝鮮人学徒志願兵の記録
著者、公文書発信者など李佳炯
公文書宛先
発行日1995.3.3
発行所連合出版
ページ63-65
出典備考岩本とは李佳炯のこと。著者略歴に「1944年1月、朝鮮学徒志願兵として龍山の26部隊入隊、ビルマに赴く」とある。本証言は「第4章 地獄の天使ら」の記載。冒頭に、「1944年9月初旬ー中旬(モールメンーマンダレー)」と記されている。
備考 岩本とは李佳炯のこと。著者略歴に「1944年1月、朝鮮学徒志願兵として龍山の26部隊入隊、ビルマに赴く」とある。本証言は「第4章 地獄の天使ら」の記載。冒頭に、「1944年9月初旬-中旬(モールメンーマンダレー)」と記されている。
テキストのコピーはできません。