1994年5月8日、組閣したばかりの羽田首相(新生党)が永野茂門法相の「南京大虐殺でっちあげ」発言に対して、早々に辞任・更迭で早期収拾を図ったと大きく報道し、併せて韓国が「従軍慰安婦を『公娼』とした永野法相の発言について厳重に抗議した」1ことを報じています2。前日の5月7日には「法相の問題発言、撤回は当然だ」との社説も掲載されています。
戦後50年。侵略戦争について政治家・大臣の、本音の歴史観が公然と語られるようになります。渡辺美智雄元副総理の「日韓併合条約は円満に結ばれた」との発言に対し、6月6日、韓国の学生が抗議してソウルの日本大使館に附属した日本文化院に火炎瓶が投げ込まれ、「侵略戦争を即刻反省せよ」「従軍慰安婦への蛮行を謝罪せよ」などのビラがまかれたと伝えています3
1997年1月27日、梶山官房長官の「慰安婦」発言については、「日本各地に公娼、私娼がいて、軍隊が外地に行くことで、そういう方々も進出していった」と語ったことは、「日韓にまたがる慰安婦問題を申し上げたのではなく、教育改革の問題について、歴史教育を充実させるべきだ」という趣旨だったという官房長官の弁明を伝えています。4
1998年7月31日の中川昭一農水相の「強制があったかどうかわからない」発言については「わからない以上『強制性』があったとする政府見解と同じ立場をとる」と、同日に撤回したことを報じています。6
その後は2005年の中山成彬文科相の「従軍慰安婦という言葉はなかった」7や、2006年の下村博文官房副長官の「河野談話を再検討する必要がある」8発言は豆記事扱い。「慰安婦」関係の公人発言を問題としないという、読売新聞の方針の表れといえます。
記事 1~5
記事抜粋
従軍慰安婦を『公娼』とした永野法相の発言について厳重に抗議した
記事抜粋
日韓併合条約は円満に結ばれた
「侵略戦争を即刻反省せよ」「従軍慰安婦への蛮行を謝罪せよ」
記事抜粋
日本各地に公娼、私娼がいて、軍隊が外地に行くことで、そういう方々も進出していった
日韓にまたがる慰安婦問題を申し上げたのではなく、教育改革の問題について、歴史教育を充実させるべきだ
記事 6~10
記事抜粋
わからない以上『強制性』があったとする政府見解と同じ立場をとる
記事抜粋
従軍慰安婦という言葉はなかった
河野談話を再検討する必要がある
「気流」は読売新聞の投書欄です。時代を反映して、1994、95年あたりには、「慰安婦」問題の投書も多く取り上げられ、政府から出された「慰安婦」被害者に対する見舞金を民間基金から支給する案に対しては、厳しい目を向けています。「日本政府が責任と誠意をもって負担するのが筋」9、「民間基金にゆだね、国は側面から支援するというのは本末転倒」10と批判し、「反対する国民を弾圧してまで強行した侵略戦争の被害者だ」9、「この問題は、もともと国(軍)の指示から始まった」10と国の責任を指摘しています。国家が引き起こした問題を「『慰安婦基金』という形で国民に反省を強いようとしている」15と政府の欺瞞を指摘する投書もあり、76歳の読者からは「私も先の大戦で彼女たちの存在を知っている。彼女たちも戦争被害者」16と当時を知る者としての意見が寄せられています。
その他にも、加害の歴史を子どもに教えることを否定する政治家の発言に「野蛮な行いを繰り返す懸念が増幅される恐れがある」18との意見や、「犠牲となったアジアの女性の心には同じような痛みと怒りが渦巻いているはず」21と、1995年の沖縄での米兵による少女性暴力事件への衝撃とともに、「慰安婦」被害者に思いを寄せる投書もあります。
また、クマラスワミ報告について「都合の悪いことは黙殺するとは、虫がよすぎる」17と指摘した投書や、桜井よしこさんの講演が中止されたのは19で報じられているような「言論の自由」の侵害ではなく、桜井さんの「慰安婦公娼論」が「差別言論」であり、暴力であるからだとの投書も見られます。
記事抜粋
日本政府が責任と誠意をもって負担するのが筋
...
反対する国民を弾圧してまで強行した侵略戦争の被害者だ
民間基金にゆだね、国は側面から支援するというのは本末転倒
...
この問題は、もともと国(軍)の指示から始まった
記事 16~20
記事抜粋
私も先の大戦で彼女たちの存在を知っている。彼女たちも戦争被害者
都合の悪いことは黙殺するとは、虫がよすぎる
野蛮な行いを繰り返す懸念が増幅される恐れがある
記事抜粋
犠牲となったアジアの女性の心には同じような痛みと怒りが渦巻いているはず