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戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

「wamだより」VOL.17(2011.3)

  • 巻頭言:韓国・闘う女性アーティストとの出会い
  • 特集1 女性国際戦犯法廷から10年・国際シンポジウム、盛会のうちに終了
    • 中国・フィリピン・韓国の被害者の要請行動
    • 国際シンポジウム関連証言集会:韋紹蘭さん、ナルシサ・クラベリアさん
  • セミナー報告 VAWW-NETジャパンとの共催セミナー
  • 日本軍「慰安婦」問題の立法解決を求める国際署名提出行動
  • 特集2 ユン・ソクナム作品wam寄贈記念シンポジウム開催
  • wam de ART「韓国の現代美術と女性、政治」
  • wam パネル巡回 各地でのwamパネル展のご紹介
  • 東京YWCA「アジアを見つめて 植民地と富山妙子の画家人生」展
  • 第6回「やより賞」「やよりジャーナリスト賞」贈呈式
  • 闘う世界の女性たち(11) アフガニスタン、ダルフール、カシミール
  • 「慰安婦」問題解決を求める地方議会意見書、可決続く! 函館、士別
  • 第9回特別展「フィリピン展」7月2日よりスタート!
  • 連載 被害女性たちの今(14)海南島 海南島のアポたち
  • イベントカレンダー
  • wamのひとびと
  • wamライブラリーから
【巻頭ページ】

韓国・闘う女性アーティストとの出会い

池田恵理子(wam館長)

wamだより17号「慰安婦」問題をきっかけに韓国へ行くようになってから、韓国では女性アーティストたちが女性運動の内側にいることの素晴らしさを、常々、羨ましく思ってきました。ナヌムの家のあちこちに展示された作品やハルモニたちへの絵画セラピー、韓国挺身隊問題対策協議会の発行物やグッズに至るまで、多くのアーティストたちの存在が感じられたからです。これは軍事政権と闘った民主化運動とそれに連動した女性運動が、文化や芸術にまで浸透したことの表れではないでしょうか。翻って日本では、政治的なメッセージを持つアートは排除されがちで、フェミニストでアーティストという女性たちも少数派です。

この違いを痛感したのが、1 月から2 月にかけてwamが科研の「20世紀女性美術家と視覚表象の比較研究」のプロジェクトと共催で行った一連のアート企画でした(詳細は本誌の特集を参照)。これは、韓国現代美術を代表するアーティストで女性運動のアクティビストでもあるユン・ソクナムさんから、「wamの活動支援の一助に作品を寄贈したい」という申し出を受けたことから始まりました。ソクナムさんは廃木にさまざまな女性の像を彫った作品《999》のうちの10体をwamに寄贈され、1 月15日の記念シンポジウムでは、さらに10体を贈ってくれました。これらの作品とソクナムさんとの出会いは感動的な出来事でしたが、日本のフェミニズムや美術界について考える契機にもなりました。

ソクナムさんはナヌムの家・歴史館にハルモニたちの慰霊と追悼の場として、大きな木製の女性像と真鍮の香炉、ロウソクの光で構成された空間を作った人です。彼女の話からは、母の肖像をはじめとする作品群を通して、儒教的な家父長制度の下で苦しむ女性たちを浮き彫りにしてきた足跡を知ることができました。しかしどの作品も豊かで美しく、決して教条的ではありません。観る者の魂を揺り動かす力を持っています。

講演前にwamの館内を案内した時、ソクナムさんは松井やよりコーナーに関心を示し、松井さんがジャーナリストとして、かつ女性運動のアクティビストとして活動してきたことに強い共感をおぼえたようでした。私はソクナムさんにもアクティビストらしいパワーとセンス、フットワークの軽さを感じて、とても嬉しくなりました。

このところ、チュニジアからエジプト、バーレーン、リビアなど、アラブ世界に広がっている民衆蜂起から目が離せない日が続きます。日本国内だって“民衆蜂起”が起きていいはずのことはいくつもあると思うのに、風は起こりません。アートから政治性を抜き取り“趣味”の世界に閉じ込めてきたのは、私たち自身ではないのか…そんな思いにかられるこの頃です。