参院選の惨憺たる結果にうなだれつつ、新たな決意!
池田恵理子(wam館長)
参議院選挙は、予想通り自民党の圧勝に終わりました。石破茂幹事長は「選挙戦では憲法改正・原子力政策についてきちんと逃げずに訴えてきたので、それも含めて支持をいただいたものと考えている」とコメントしています。実際には強い反発を避けて、選挙戦では「アベノミクス」「景気回復」で押し切りましたが、「私のライフワークは憲法改正」と公言している安倍首相の下で、憲法改正と原発再稼動に拍車がかかるのは目に見えています。彼のタカ派的言動には、国民の権利よりも国家権力を優先する戦前の軍国主義と、アジア太平洋戦争をアジア解放のための聖戦だと言い張る皇国史観が見え隠れします。これらがどれだけ、アジアの国々ばかりか、“盟友”と頼りきっている米国からさえも危険視され、疎まれていることか……。
wamでは選挙期間前から、安倍首相の「慰安婦」被害の歪曲・否定論に擦り寄る形で始まった橋下大阪市長の慰安所必要論と、大ボラの「どこの国でもやっていた」論に憤怒と抗議をぶつけながら、開幕を控えた台湾展の準備を進めなければなりませんでした。まさに疾風怒濤の3 ヵ月。しかしこの間、予想外の収穫もありました。半世紀もの間日本の植民地となり、戦時体制下では皇民化教育が徹底して行われた台湾の歴史を学びながら展示パネルを作っていくと、安倍・橋下や石原(慎太郎)といった政治家たちが回帰したがっている戦前の日本という国の正体と現実が、クリアに浮かび上がってきたのです。こんな時代に逆戻りするなんて、真っ平ごめんです! そして私たちが、台湾という近しい隣国を支配した自国の歴史と責任にいかに無知で無頓着だったかを実感し、パネルの作成に必死に打ち込みました。以来、私は台湾史だけでなく、明治維新前後に遡った歴史の勉強を本格的に始めるようになりました。
さらに橋下暴言事件は、想像外の事態を引き起こしました。これまでマイナーな問題として片隅に追いやられてきた「慰安婦」問題が急に脚光を浴びるようになり、wamの来館者が急増したのです。6 月の1 ヵ月間で649人! これは、2005年8 月にwamが開館した時に次ぐ、歴代第2 位の月間来館者数です。注目の沖縄展の最後の1 ヵ月ということも重なって、wamは大繁盛でした。当然のことながら取材も殺到。韓国、中国、香港、台湾、フランス、ロイター通信などの新聞やテレビだけでなく、国内の全国紙や、沖縄や北海道の地方紙もやってきました。インターネットTVの生放送への出演にも、wamのスタッフに声がかかりました。その上、素晴らしいタイミングで、平和運動に貢献した団体に贈られる日本平和学会の第4 回平和賞がwamに贈られるという知らせが届き、一同、大喜びしました。
しかし決して浮かれているわけではありません。今後は、今まで以上に厳しい状況を迎えるはずです。それにもめげず、諦めず、政権の動きを正確につかみながら、その暴走を許さない取り組みに邁進していかなければなりません。ひとりでも多くの方に、この活動の輪に加わっていただきたいと願っています。