参院選で隠されていた、憲法改正と日本会議
池田恵理子(wam館長)
参院選の結果、改憲勢力が衆参両院で3分の2を超える事態になりました。各局の派手な選挙速報を見ながら、投票前の選挙報道の少なさを思いました。事実、NHKを含む在京テレビ6局の選挙関連の放送時間は、前回より3割近く減っていたそうです。投票日間際のNHKニュースではアナウンサーが投票を呼びかけたくらいで、参院選をまともに取り上げていません。しかも選挙戦では、自民党が憲法改正を争点から隠し、メディアもそれに追随しました。ところが開票後は一斉に「改憲勢力」の勝利を報じ、安倍首相も選挙演説では改憲に触れなかったのに、開票後には「(憲法の)前文から全てを含めて変えたい」と言い出します。「民意は改憲に前向き」と吹聴し、翌朝からは“沖縄いじめ”を始める始末です。何と選挙民をバカにした戦術でしょう!
もう一つ、開票前にマスメディアでは伏せられていたことがあります。安倍政権では、首相をはじめ閣僚の4分の3が極右団体「日本会議」に属しているという情報です。1997年に発足した「日本会議」は、憲法改正、教育基本法改正、靖国公式参拝、夫婦別姓法案反対などを掲げ、海外では「大日本帝国の復権を目指す超国粋主義的グループ」と言われています。国会議員の会員は2016年2月には280人にのぼったといいます。このところ「日本会議」を取材した本の出版が相次いでいますが、マスコミには滅多に登場しませんでした。ところが民放は開票速報で取り上げていましたから、各局は事前に「日本会議」を取材していたわけです。メディアの自主規制の一種でしょうか。
参院選開票の翌11日には、NHK問題に取り組む27団体がNHK経営委員会へ籾井会長辞任を求める申し入れを行い、私もwamを代表して参加しました。ここでは就任したばかりの石原進・経営委員長(JR九州相談役)が「日本会議福岡」の名誉顧問であることも、問い質しました。公共放送を監督すべき経営委員会のトップが「日本会議」とは、あまりにも不適切だからです。
それでも、今回の選挙には明るいニュースもありました。前回は全国31の一人区で非自民は2議席でしたが、今回は32の一人区で野党統一候補が11議席を確保。中でも福島と沖縄という国内で最も苦難を強いられている選挙区で、現職大臣2名を落選させたのです。メディアが政権批判を自粛してきた中でのこのような結果は、快挙です。
厳しい冬の時代は続きますが、私たちにはやるべきことがたくさんあります。5月末まではユネスコの世界記憶遺産への申請作業に追われ(4~5 ページを参照)、wamのアーカイブ事業への本格的な取り組みも始めました。アーカイブ事業には多くの方々から支援の募金が寄せられています。ありがとうございます! wamは皆さまの支援と期待に応えられるよう全力で取り組み、この試練の時代に成すべきことを実行していきます。