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戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

国連勧告

条約機関の勧告

1994年以降、日本が批准している各国連人権条約の履行状況を審査する条約機関では、その最終所見において「慰安婦」問題が取り上げられてきました。以下は、各条約機関における「慰安婦」問題関連部分の抜粋です。


自由権規約(市民的政治的権利に関する国際規約)委員会 最終所見

2008年 (CCPR/C/JPN/CO/5)
22. 委員会は、当該締約国が第二次世界大戦中の「慰安婦」制度の責任をいまだ受け入れていないこと、加害者が訴追されていないこと、被害者に提供された補償は公的資金ではなく私的な寄付によってまかなわれており不十分であること、「慰安婦」問題に関する記述を含む歴史教科書がほとんどないこと、そして幾人かの政治家およびマスメディアが被害者の名誉を傷つけあるいはこの事件を否定し続けていることに、懸念をもって注目する。(第7、8条)
当該締約国は「慰安婦」制度について法的責任を受け入れ、大半の被害者に受け入れられかつ尊厳を回復するような方法で無条件に謝罪し、存命の加害者を訴追し、すべての生存者(survivors)に権利の問題として十分な補償をするための迅速かつ効果的な立法・行政上の措置をとり、この問題について生徒および一般公衆を教育し、被害者の名誉を傷つけあるいはこの事件を否定するいかなる企てをも反駁し制裁すべきである。

2014年(CCPR/C/JPN/CO/6)
「慰安婦」に対する性奴隷慣行

14. 委員会は、締約国が、慰安所のこれらの女性たちの「募集、移送及び管理」は、軍又は軍のために行動した者たちにより、脅迫や強圧によって総じて本人たちの意に反して行われた事例が数多くあったとしているにもかかわらず、「慰安婦」は戦時中日本軍によって「強制的に連行」されたのではなかったとする締約国の矛盾する立場を懸念する。委員会は、被害者の意思に反して行われたそうした行為はいかなるものであれ、締約国の直接的な法的責任をともなう人権侵害とみなすに十分であると考える。委員会は、公人によるものおよび締約国の曖昧な態度によって助長されたものを含め、元「慰安婦」の社会的評価に対する攻撃によって、彼女たちが再度被害を受けることについても懸念する。委員会はさらに、被害者によって日本の裁判所に提起されたすべての損害賠償請求が棄却され、また、加害者に対する刑事捜査及び訴追を求めるすべての告訴告発が時効を理由に拒絶されたとの情報を考慮に入れる。委員会は、この状況は被害者の人権が今も引き続き侵害されていることを反映するとともに、過去の人権侵害の被害者としての彼女たちに入手可能な効果的な救済が欠如していることを反映していると考える(2 条、7 条、及び8 条)。

締約国は、以下を確保するため、即時かつ効果的な立法的及び行政的な措置をとるべきである。
(i) 戦時中、「慰安婦」に対して日本軍が犯した性奴隷あるいはその他の人権侵害に対するすべての訴えは、効果的かつ独立、公正に捜査され、加害者は訴追され、そして有罪判決がでれば処罰すること。
(ii) 被害者とその家族の司法へのアクセスおよび完全な被害回復。
(iii) 入手可能なすべての証拠の開示。
(iv) 教科書への十分な記述を含む、この問題に関する生徒・学生と一般市民の教育。
(v) 公での謝罪を表明することおよび締約国の責任の公的認知。
(vi) 被害者を侮辱あるいは事件を否定するすべての試みへの非難。


社会権規約(経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約)委員会 最終所見

2001年 (E/C.12/1/Add.67)
C.主な懸念される問題
26.当委員会は、アジア女性基金による戦時中の「慰安婦」への補償の申し出に対して懸念を有している。この基金は民間資金を中心とし、対象となる女性にとって十分な補償とは考えられない。
53.当委員会は、日本が「慰安婦」を代表する組織との間で、遅きに失しないうちに犠牲者の期待に添う補償方法について十分な協議を行うよう強く勧告する。

2013年(E/C.12/JPN/CO/3)
C.主な懸念事項および勧告
26.委員会は、「慰安婦」が被った搾取が経済的、社会的及び文化的権利の享受及び補償の権利にもたらす長きにわたる否定的な影響に懸念を表明する(第3条、第11条)。
委員会は、締約国に対し、搾取がもたらす長きにわたる影響に対処し、「慰安婦」が経済的、社会的及び文化的権利の享受を保障するためのあらゆる必要な措置をとることを勧告する。また、委員会は、締約国に対して、彼女らをおとしめるヘイトスピーチ及びその他の示威運動を防止するために、「慰安婦」が被った搾取について公衆を教育することを勧告する。


女性差別撤廃委員会 最終所見

1994年 (A/50/38)
633.委員会は、日本の報告が他のアジアの諸国からの女性に対する性的搾取及び第二次世界大戦中の女性に対する性的搾取に関する問題を真剣に反映していないことにつき失望の意を表明した。(以下略)
635.[略]・・・委員会は、また、日本政府に対し、これらの最近の問題及び戦争に関連する犯罪を取り扱うため具体的かつ効果的な措置をとること及びその措置につき次回の報告で委員会に報告することを勧奨する。

2003年 (A/58/38)
361.[略]・・・いわゆる「従軍慰安婦」の問題に関しては、第2回・3回報告の審議以前、以後にとられた措置について、締約国が提供した包括的な情報を評価しつつ、委員会は、この問題についての懸念が継続していることに留意する。
362.[略]・・・委員会は、締約国がいわゆる「従軍慰安婦」問題を最終的に解決するための方策を見出す努力を行うことを勧告する。

2009年 (CEDAW/C/JPN/CO/6)
【女性に対する暴力】
37.委員会は、「慰安婦」の状況について締約国がいくつかの措置をとったことには留意するが、第二次世界大戦中に被害を受けた「慰安婦」の状況について、締約国が永続的な解決を見出していないことを残念に思うとともに、学校の教科書からこの問題に関する記述が削除されたことに懸念を表明する。
38.委員会は、「慰安婦」の状況について、被害者への補償、加害者処罰、公衆に対するこれらの犯罪に関する教育を含む、永続的な解決を見出す努力を締約国が緊急に行うべきとの勧告を改めて表明する。

2016年 (CEDAW/C/JPN/CO/7-8)
【「慰安婦」】
28. 当委員会は、前回の最終所見(CEDAW/C/JPN/CO/6, paras. 37 and 38)を想起し、また未解決の「慰安婦」問題に関して他の国連人権機関が行った数多くの勧告、例えば人種差別撤廃委員会(CERD/C/JPN/CO/7-9)、自由権規約委員会(CCPR/C/JPN/CO/6)、拷問禁止委員会(CAT/C/JPN/CO/2)、社会権規約委員会(E/C.12/JPN/CO/3)、国連人権理事会の特別手続の任務保持者や普遍的定期審査 [UPR] (A/HRC/22/14/Add.1, para.147-145 et seq.) の勧告に言及する。
「慰安婦」問題を解決しようとする締約国の努力、最近では2015年12月28日に発表された締約国と韓国の間の二国間合意を通じてのものに注目しつつ、当委員会は、締約国が前述の諸勧告を実施していないこと、そして、違反を指摘されているものは当該条約が締約国にとって発効した1985年より前に起こったものであるから「慰安婦」問題は委員会の権限外であるとする締約国の主張を遺憾に思う。当委員会は以下のことをさらに遺憾に思う。
(a)「慰安婦」に対して行われた侵害に対する締約国の責任に関して、近年、公的な職にある者や指導的立場にある者による発言が増えていること、また「慰安婦」問題が「最終的かつ不可逆的に解決した」とする大韓民国との二国間合意の発表は被害者中心アプローチを十分に採用していないこと。
(b)深刻な人権侵害を受けた「慰安婦」には、締約国から公式で曖昧さのない責任の認知を得ることのないまま死去した者がいること。
(c)他の関係国の「慰安婦」被害者に対する国際人権法上の責務を締約国が果たしていないこと。
(d)締約国が「慰安婦」問題に関する教科書の記述を削除したこと。

29. 当委員会は前回の勧告(CEDAW/C/JPN/CO/6, paras. 37 and 38)を繰り返し、また「慰安婦」問題は、被害者に対する効果的な救済の不足が継続している現状のもとでは、第二次世界大戦中に締約国の軍隊によってなされた侵害行為の被害者/サバイバーの権利に継続的に影響を与える深刻な違反を発生させるものであるとする。よって、当委員会は、このような違反を扱うことに時間的管轄権による妨げはないと考え、締約国に以下を求める:
(a)指導的立場にある者や公職者が責任について中傷的な発言を止めることを確保すること。こうした発言は被害者に再びトラウマを与える。
(b)被害者の救済への権利を認知し、それに基づいて損害賠償、満足、公式謝罪とリハビリのサービスを含む十全で効果的な救済と被害回復措置を提供すること。
(c)2015年12月に大韓民国と共同発表した二国間合意を実施するにあたって、締約国は、被害者/サバイバーの見解を十分に考慮し、彼女たちの真実と正義と被害回復に対する権利を保障すること。
(d)教科書に「慰安婦」問題を十分に取り入れ、生徒・学生や一般の人々に歴史の事実が客観的に提供されることを確保すること。そして、
(e)次回の定期報告において、被害者/サバイバーの真実・正義・被害回復の権利を保障するために行われた協議や他の施策の状況について情報を提供すること。


拷問禁止委員会 最終所見

2007年 (CAT/C/JPN/CO/1)
【時効】
12.委員会は拷問と虐待同然の行為に時効が適用可能であることを懸念する。委員会は拷問と虐待同然の行為に対する時効でこれらの犯罪の捜査、起訴そして処罰が妨げられるのではないかと懸念する。特に、委員会は、時効に関連する理由で、第二次世界大戦中に軍性奴隷被害者(いわゆる「慰安婦」)によって起こされた訴訟が棄却されたことを残念に思う。
拷問と虐待を構成する行為は、拷問の企ておよび拷問に共謀するいかなるものの行為を含めて、時間の制限なしで、調査し、起訴し、罰することができるように、締約国は自国の時効に関する規則・規定を調  査し、条約に基づく義務と一致させるべきである。

【補償およびリハビリテーション】
24. 委員会は、特に第二次世界大戦中の日本軍による性奴隷行為の生存者を含む性暴力の被害者への不十分な救済策と、性暴力やジェンダーに基づいた条約違反を防ぐために有効な教育その他の対策を取ることを怠っていることを懸念する。戦時虐待の生存者は締約国代表によって「不治の傷」を負ったと認められてはいても、締約国による事実の否定、事実の隠蔽や不開示、拷問行為に刑事責任を負うものの不起訴、および被害者と生存者に適切なリハビリテーションを提供しないことなどによって、虐待や再度の心的外傷を継続的に経験している。
委員会は、教育(条約第10条)および救済策(条約第14条)の両方がそれ自身、条約に基づく締約国の義務であり、さらなる侵害を予防する手段であると考える。繰り返される公式否認、不起訴、および適切なリハビリテーションを提供しないことなどすべてが、教育や救済策を通  じて拷問と虐待を防ぐという条約に基づく義務についての日本の不履行を構成している。委員会は、締約国が性別とジェンダーに基づく差別の根源に取り組む教育を実施するための手段を取り、不処罰防止手段を含む被害者のリハビリテーションの手段を提供するように勧告する。

2013年
【軍による性的奴隷の被害者】
19. 第二次世界大戦中の日本軍性奴隷制の慣行の被害者、いわゆる「慰安婦」に対して行われた虐待を認めるためにとられた諸手段に関して日本政府から提供された情報にもかかわらず、委員会はこの問題に対処するに当たり、締約国が、特に以下について本条約に基づく責務を果たすのを怠っていることに、深い懸念を持ち続けている(条約第1条、第2条、第4条、第10条、第14条、16条)。
(a) 適正な救済とリハビリテーションを被害者に提供するのを怠ったこと。委員会は、公的資金ではなく民間の募金による財政で賄った賠償が、不十分かつ不適切であったことを遺憾とする。
(b) 拷問のこのような行為の加害者を訴追し、裁きの場に立たせて刑を受けさせるのを怠ったこと。委員会は、拷問の効果が本質的に継続的である点に鑑み、被害者が受けるべき救済、賠償、リハビリテーションを奪うため、時効は適用されるべきでないことを想起する。
(c) 関連の諸事実および資料の隠ぺい、または公開を怠ったこと
(d) 複数の国会議員を含む国および地方の、高い地位の公人や政治家による、事実の公的な否定や被害者に再び心的外傷を負わせることが継続していること
(e) とりわけ歴史教科書でこの問題に関する記述が減少していることにみられるように、ジェンダーに基づく条約違反を防止するための効果的な教育的施策を実施するのを怠ったこと
(f) 本委員会の勧告や、その他の多くの国連人権機関、とりわけ自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会、社会権規約委員会、人権理事会から委任を受けた複数の特別手続などによる諸勧告と類似のものであるところの、この問題に関連してUPR(国連「普遍的定期的審査」)の文脈でなされた複数の勧告を、締約国が拒絶(A/HRC/22/14/Add.1, paras.147.145 et seq.)していること。
本委員会一般勧告第3号を想起しつつ、本委員会は締約国に対し、即時かつ効果的な立法的および行政的措置をとり、「慰安婦」の諸問題について被害者中心の解決策をとるよう強く求める。特に:
(a) 性奴隷制の諸犯罪について法的責任を公に認め、加害者を訴追し、適切な刑をもって処罰すること
(b) 政府当局者や公的な人物による事実の否定、およびそのような繰り返される否定によって被害者に再び心的外傷を与える動きに反駁すること
(c) 関連する資料を公開し、事実を徹底的に調査すること
(d) 被害者の救済を受ける権利を確認し、それに基づき、賠償、満足、できる限り十分なリハビリテーションを行うための手段を含む十全で効果的な救済と補償を行うこと
(e) 本条約の下での締約国の責務に対するさらなる侵害がなされないよう予防する手段として、この問題について公衆を教育し、あらゆる歴史教科書にこれらの事件を含めること。


人種差別撤廃委員会 総括所見

2014年(CERD/C/JPN/CO/7-9)
「慰安婦」

18.委員会は、締約国の代表団から提供された、第二次世界大戦中に日本軍により性的に搾取された外国の「慰安婦」の問題解決のために行われた努力に関する情報に留意する。委員会はまた、1995年に締約国が設立したアジア女性基金を通して提供された補償と、2001 年の日本の首相の謝罪を含む政府の謝罪の表明に関する情報に留意する。生存する「慰安婦」に対する人権侵害は、彼女たちの正義および賠償の権利が完全に実現されない限り続くことを踏まえ、委員会は、大半の「慰安婦」が認知、謝罪、ないしはいかなる種類の補償も受けたことがないという報告に懸念する(第 2 条と第 5 条)。

委員会は締約国が以下のために即時の行動をとるよう促す:
(a) 日本軍による「慰安婦」の権利の侵害に関する調査の結論を出し、人権侵害に責任のある者たち を裁くこと、
(b) すべての生存する「慰安婦」あるいは彼女たちの家族に対する誠実な謝罪の表明と適切な賠償の 提供を含み、「慰安婦」問題の包括的で、公平で、永続的な解決を追求すること、そして、
(c) それら出来事の中傷あるいは否定のあらゆる試みを非難すること。

2018年(CERD/C/JPN/CO/10-11)
「慰安婦」

27.2015年の大韓民国との最近の合意を含む、「慰安婦」問題を解決する努力に関して締約国が提供した情報に留意する一方で、委員会は、これらの努力が十分な被害者中心のアプローチをとっていないこと、存命の「慰安婦」は適切に相談を受けていないこと、第二次世界大戦以前および大戦中に、軍によってこれらの女性になされた人権侵害について、この解決は明白な責任を規定していないこと、とする報告に懸念する。委員会はまた、「慰安婦」に関する政府の責任を矮小化する一部の公人の発言と、そうした発言がサバイバーに与える潜在的な否定的影響を懸念する。

28.委員会は、締約国が、被害者中心アプローチを伴い、あらゆる国籍の「慰安婦」を包摂し、これらの女性たちに対する人権侵害において締約国が果たした役割について責任を受け入れた、「慰安婦」問題の永続的な解決を確保するよう勧告する。委員会は、次回の定期報告書において、生存する「慰安婦」とその家族への十分な施策を含む「慰安婦」問題の解決を達成するための努力について詳細な情報を求める。

日本軍「慰安婦」アーカイブズ
女性国際戦犯法廷アーカイブズ

日本軍慰安所マップ

日本軍「慰安婦」関連公文書

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