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戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

抗議声明 籾井勝人NHK会長の発言に抗議し、即時辞任を強く求めます

 
本日の「さよなら、籾井会長!」NHK放送センター(西口)前抗議アクションでwamの抗議声明を渡します。
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抗議声明
籾井勝人NHK会長の発言に抗議し、即時辞任を強く求めます
 
2014年1月25日、NHK会長のあなたはその就任記者会見で、「慰安婦」は「戦争をしているどこの国にもあった。ドイツになかったか、フランスになかったか。そんなことはないでしょう。ヨーロッパはどこでもあった」、また韓国は「日本だけが強制連行したみたいなことを言っているから話がややこしい。お金をよこせ、補償しろと言っている。しかしすべて日韓条約で解決している」と発言しました。
これを聞いて私たちは激しく憤り、強い危機感を抱きました。「慰安婦」制度の実態を知らずに歪曲された事実を吹聴することは、今も苦しみ続けて尊厳の回復を求めている被害女性たちを深く傷つけるものです。このような戦時性暴力の肯定と女性への人権侵害に無感覚な人が、NHKのトップに就任することがどれほど不適切で危険であるか、あなたは考えたことがありますか。
 
私たち、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)は2005年から、日本軍「慰安婦」制度の被害と加害の記録を収集し公開する活動を続けています。日本軍慰安所は、あなたが「オランダの飾り窓」と言っているような戦場の売春宿ではありません。日本軍と政府がアジア全域に、長期間にわたって組織的に設置・運営し、占領地や植民地の女性たちを監禁して強かんし続けた性奴隷制であり、世界に類を見ません。
このような事実は日本軍側の資料からも聞き取り調査や裁判記録ですでに全貌が明らかにされ、被害国だけでなく世界中の人々が知っています。戦時性暴力が重大な人権侵害で、根絶すべき戦争犯罪であるということも国際的な共通認識になってきました。このような戦争犯罪を肯定し、無頓着な人が報道機関の長におさまってしまうことに、私たちは憤りとともに恥ずかしさを覚えます。
 
あなたの発言は「狭義の強制はなかった」として河野談話の見直しを目指している安倍晋三首相や、「『慰安婦』は必要だった」「どこの国にもあった」と述べた橋下徹大阪市長の歴史認識や主張に沿ったものです。
このことから私たちは、2000年の女性国際戦犯法廷を取り上げたNHKの「慰安婦」番組改竄事件を思い起こしました。あなたは安倍晋三内閣官房副長官(当時)らがNHKの番組に圧力をかけ、これが裁判で問われたことを知っていますね?裁判では最高裁で敗訴したものの、職員の内部告発で政治介入が暴露され、BPO(放送倫理・番組向上機構)は意見書を出してNHKの自主・自律を危うくさせた行為であったことを指摘しています。
韓国に対してはこの問題は「日韓条約で解決している」と言っていますが、これはあくまでも日本政府の見解であり、日韓請求権協定の解釈をめぐって日韓両国政府間で意見が対立している今、「解決済み」とは言えません。見識と事実誤認は重要な問題をはらんでいます。
 
またあなたは国際放送に関して領土問題について「明確に日本の立場を主張するのは当然。政府が右ということを左というわけにはいかない」と述べました。特定秘密保護法や安倍首相の靖国参拝の報道姿勢についても、政府や首相の見解に添った認識を語っています。そして制作・報道現場と会長の意見が食い違った場合には、「最終的に会長が決めるわけですから、私の了解を取ってもらわなくては困る」と答えました。
これは放送法が明記しているNHKの不偏不党、自主自立、表現の自由に反するものであり、制作現場を委縮させ自己規制を強いる恐ろしい事態です。
 
このままでは、アジア太平洋戦争に国民を駆り立て、「大本営発表」を垂れ流すばかりだった戦時中のNHKの過ちが、再び繰り返される恐れがあります。そんな事態を招かないためにも、NHKの現場の職員の奮起と視聴者との連帯も呼びかけたいと思います。
この会見から、あなたがNHK会長として不適格であることが明確になりました。私たちは、このような不見識な人物の会長就任させたNHK経営委員会と安倍首相の責任を問うとともに、あなたがその責任をとって会長を辞任されるよう 強く求めます。
 
 
2014年2月1日
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)
運営委員一同 館長池田恵理子