憲法があぶない!:ベアテ・シロタ・ゴードンさんの遺言
池田恵理子(wam館長)
日本国憲法の草案作りに携わり、日本側の反対を抑えて憲法24条の男女平等の条項を起案したベアテ・シロタ・ゴードンさんが昨年末、すい臓がんで亡くなりました。彼女は最期の病床で「憲法の平和条項と女性の権利を守ってほしい」と願い、献花や香典の代わりに「九条の会」への寄付を呼びかけました。「日本国憲法は世界のモデル」と言っていたベアテさんは、日本で改憲の動きが強まっていることを深く憂慮していたのです。
ベアテさんでなくても、改憲を最大目標にしている安倍政権下、ファシズム時代の再来か…という危機感が膨らんでいます。自民党の憲法改正草案では自衛隊は「国防軍」となり、集団的自衛権の行使が容認されるばかりか、憲法第21条の「表現の自由」や第12条の「自由及び権利」には「公益及び公的な秩序に反してはならない」という制約が付けられ、第97条の「基本的人権の本質」は削除。「国民主権」ではなく、国民を国家に奉仕させようという姿勢が濃厚で、「国家権力は暴走するものだから、それを抑制しなければならない」という、歴史的な反省に基づいた憲法の基本理念が見当たりません。
こんな中、私たちを震撼とさせる事件が、大阪で起こりました。2 月13日、大阪府警は在日朝鮮人などを排斥し暴力的な差別的発言を繰り返してきた「在日特権を許さない市民の会」(在特会)からの「被害届」を理由に、市民4 人を「被疑者」にでっちあげ、「日本軍『慰安婦』問題・関西ネットワーク」の連絡先などを家宅捜索したのです。これは警察による「慰安婦」問題解決運動への露骨な弾圧に他なりません(詳細は4 ページを参照)。
一方、2 月14日には松井一郎大阪府知事が来年度予算の概算報告の記者会見で、「ピースおおさか」から南京大虐殺など旧日本軍の加害行為に関する展示を撤去すると語りました。日本の戦争加害に向き合う姿勢の、大きな後退です。松井府知事が幹事長をつとめる日本維新の会の橋下徹共同代表は「『慰安婦』に強制連行の証拠はない」と述べ、「河野談話」の見直しを目論む安倍首相と歴史認識を共有しています。これらの勢力が夏の参議院選で大勝すれば、憲法9 条を改悪し、「戦争ができる国」へ一気になだれ込む可能性があります。
こうした最悪の状況下では、思いつくことを片っ端からやっていくしかありません。ベアテさんの遺志を無駄にせず、最大限活用させてもらいましょう。3 月30日には東京の女性就業支援センターでベアテさんを偲ぶ会が開かれ、5 月10日には「ベアテさんの志を受け継ぐ会」が千駄ヶ谷の津田ホールでイベントを開催します。日本国憲法の危機は、日本の民主主義が正念場を迎えていることを意味します。国内外の連帯を一層強め、このような政権の暴走を食い止めるために、共に行動を起こしましょう!