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戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

「wamだより」VOL.44(2020.3)

【巻頭ページ】

新型コロナウィルス対策を悪用させてはならない

池田恵理子(wam名誉館長)

このところの新型コロナウィルスの感染拡大の情報と各地での自粛の動きに揺れながら、市民運動も企画やイベントへの緊急対応に追われています。wam では3 月4 日から15 日までを臨時休館としましたが、それ以降は土日のみ開館することにしました。

2 月下旬はまだ、wam も通常通りに開館し、特別展連続セミナーを行っていました。21 日には「韓国漫画『草』の作者キム・ジェンドリ・グムスクさんと出会う会」(wamは協力団体)のために韓国から来日したグムスクさんがwam にも来館し、「充実した展示に圧倒された」と喜んでいました。大阪・広島・福山でのイベントも盛況で大好評のうちに終了し、無事に帰国されたグムスクさん。しかしその後、新型コロナウィルスをめぐっては大騒動の様相を呈してきました。

安倍首相は初期対応の遅れともたつきに批判が出始めると、十分な検討や事前準備もないままに全国の小中高校を休校させ、中国・韓国からの入国規制…といった行動に出ます。その挙句、国会に諮らなくても外出の自粛要請や施設利用制など、最長2 年にわたって個人の権利を制限できる「緊急事態宣言」を出せるように、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法を3 月13 日に成立させてしまいました。私たちの自由が侵害され、取材や報道の自由も規制される恐れがあります。これは、安倍首相が“ライフワーク”のように固執し続ける「憲法改正」の先取りと言ってもいいのではないでしょうか。

信頼できる内閣なら「緊急事態宣言」はありかもしれませんが、安倍首相はコロナウィルスより危険です。「嘘はいくらでもつく」「答弁の前後の矛盾などは無視」「謝罪してもすぐ忘れる」などの異常な行動で、民主主義も法治主義も否定してきた安倍首相に、このような権限を与えたらどうなるでしょう。しかもこうした暴走を、国会も司法もメディアも食い止められていないのです。

これまでにwam に来館された何人もの戦争体験者から、「今の日本は戦前の空気に似すぎていて、怖い」というつぶやきを聞いてきました。同じことを、101 歳で亡くなったジャーナリストのむのたけじさんも語っていました。このような危険すぎる「緊急事態宣言」を許してはなりません。