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戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

「wamだより」VOL.54(2023.7)

  • 変化のきざし
  • 「河野談話」から30 年―日本軍「慰安婦」関連公文書のサイトをリニューアル!
  • 韓国での日本軍「慰安婦」文書調査(3) ソウル大学(郭貴炳)
  • 報告 wam セミナー
    天皇制を考える(10) 靖国神社の韓国人無断合祀、何が問題なのか(南相九)
    天皇制を考える(11) 私が靖国とたたかっている理由― 20年間の靖国合祀取り消しへの闘い(李煕子)
  • 報告 wam de cafe シリーズ
    松井やよりを語る(1) 松井やよりが書いたもの(高橋晶子)
    松井やよりを語る(2) 新聞記者、松井やより(本田雅和)
  • wamの本棚から
  • フィリピン政府に対する女性差別撤廃委員会の決定とその後(沖本直子)
  • 新連載 ちゅい たれい だれい(1) 争うよりも愛しなさい~沖縄を平和発信の場にしよう(源啓美)
  • 連載 ベルリンからの風 Vol.30 性犯罪に時効はない!―「紛争下の性暴力根絶のための国際デー」報告(梶村道子)
  • 連載 扉をひらく(30) 中村ふじゑさんを偲ぶ(山口明子)
  • イベントカレンダー
  • wam データ
  • 充実してきました! wam のアーカイブズ/データベース
【巻頭ページ】

変化のきざし

渡辺美奈(wam)

「鳩のフリした鷹」というのはタチが悪い―。「ショック・ドクトリン」さながら、安倍政治を終わらせるどころか、岸田内閣のもとで悪法が次々と国会を通過、密室の閣議で国の方針を決めてしまうことも常態化しました。入管法改悪案も立法事実がないことが明らかになってもなお強行採決。一方で、「一緒に暮らそう」というやさしい呼びかけの言葉や目を引くデザインのプラカードを持って、多くの人が入管法改悪反対の直接行動に参加しました。法案成立後の支援団体の声明には「何があっても、つないだ手を放しません」とあり、闘いはこれからだという気迫を感じます。住民の意思をふみにじって軍事基地化が進む沖縄でも、「争うよりも愛しなさい」というラディカルなスローガンを掲げた若い世代が立ち上がっています(13頁の新連載参照)。自治体の議会でも新しい風が吹き、こんな社会でいいはずがないと、日本の島々の民衆による地殻変動がちょっとずつ始まっているのかもしれません。

希望を感じるできごとはwam でも続いています。6 月以降、wam の来館者数は一気に増え、1 日に50 人以上が来館した日もありました。そして、その多くが学生などの若い世代や海外からの来館者なのです。松井やよりさんを知らない学生たちがパネルを食い入るように読んでいたり、社会科の先生になりたい学生が抱負を語ったり、パンクな装いで来館した若い2 人が、ネットで探してやってきたエストニアからの旅行者だったり。事前に用意していた手紙を受付で手渡してくれたのは、20 歳前後と思しき韓国の女性です。美しい便せん2 枚に日韓両言語で思いが綴られ、「日本と韓国、そして全世界に正義が花咲くことを祈ります」とのメッセージに、びっくりする額の寄付まで添えられていました。

メッセージを残してくれるのは最近の特徴かもしれません。閉館後、受付担当がまず見に行くのがアンケート箱と来館者ノート。「イメージしていたものよりもはるかに生々しく酷い状況だった」(20 代)など、「慰安婦」にされた女性の証言に初めて触れた印象を率直に書き記してくれています。「小さいスペースながら、とても充実した資料、情熱がある」(20代)など、文字の多さを肯定的に受け止めるメッセージも多数。「学校休んできたかいがありました!」という中学2年生や、「今後も絶対あり続けてほしい場所」(30代)。また、これまでも関心を持っていた方からは、「忙しく、生きるのが苦しい今の日本社会の中で、時々ハルモニやロラの勇気や力強さを思い出して、自分をふるい立たせたいです」
と記されていました。

人との出会い、心に届いた言葉は、いつでも一歩を踏み出すきっかけになります。「また何回でも来たいし、大切な人を連れてきたい」(20代)というメッセージに励まされながら、日本の島々の民衆による地殻変動に繋がる小さな揺さぶりを、wamからも作っていきたいです。