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戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

「wamだより」VOL.57(2024.7)

  • 闘うRAWAの女性たち
  • 特別寄稿 新中学校教科書と教科書検定 (石山久男)
  • 中国・山西省で日本軍性暴力の被害者遺族が提訴 (熱田敬子)
  • 米兵による性暴力と、その隠蔽を許さない!
  • アルゼンチン、「人道に対する犯罪」として裁かれた性暴力 (石田智恵)
  • 報告 wamセミナー 天皇制を考える(14)女のからだと天皇制 (大橋由香子)
  • wamの本棚から
  • wamパネル巡回
  • 連載 Next Step(7)コロンビア大学・エンキャンプメント日記 (マレイド・ハインズ)
  • 連載 ベルリンからの風vol.33 民主主義を守り続けるのは市民の義務 (池永記代美)
  • 連載 ちゅい たれい だれい(4)合言葉は「命どぅ宝」 (源啓美)
  • 連載 扉をひらく(33)自治労の中からアジア女性基金を問い直す川崎 (小田切督剛)
  • イベントカレンダー
  • wamデータ
  • アーカイブズ掲示板
【巻頭ページ】

闘うRAWAの女性たち

渡辺美奈(wam)

2024年6月25日の夕方、「アフガニスタン女性革命協会(RAWA)」のメンバー、シャミームさんがwamを訪問してくれました。RAWAは1977年にアフガニスタンの首都カーブルで設立されたフェミニスト団体。ソ連侵攻、イスラム原理主義勢力による内戦、米国の軍事介入など、支配者や政権が変わりながらも、女性への抑圧が強いアフガニスタン社会のなかで、民主主義、政教分離、女性の人権を求めて活動を続けています。「RAWAと連帯する会」(共同代表:清末愛砂、前田朗)設立20周年の招きで来日したシャミームさんは、6月12日の広島を皮切りに、京都、大阪、名古屋、室蘭、札幌、東京と 7 都市で講演し、アフガニスタンの女性たちの厳しい現状を訴えました。忙しい日程のなかwamへの訪問は帰国前日のことでした。

RAWAとwamには繋がりがあります。2000年12月に東京で開かれた「女性国際戦犯法廷」の一環として開催された「現代の紛争下の女性に対する犯罪 国際公聴会」にはアフガニスタンからも参加がありました。壇上で証言をしたマルヤムさんは、RAWAで読み書きを学び、タリバーンに娘を強かんされたその苦しみを語りました。しかし翌2001年、アフガニスタンの状況は大きく変わります。米国は9.11の報復としてアフガニスタンを空爆し、女性の人権保護をも口実として軍事的な支配を始めます。2002年10月、カーブルにRAWAを訪問した松井やよりさんは、アフガニスタンでも女性法廷を開催したいとの希望を聞いたといいます。しかし、この地で体調不良に気づき、末期がんが発覚、世界中を駆け回った松井やよりさん最期の訪問地となりました。

これらの経緯を伝えると、28歳のシャミームさんは「これは報告しなくちゃ」と興味津々。自分のスマホで撮影すると入国時に問題になるので、同行した前田弓恵さんに「これとこれを撮影して後で送って」と頼んでいました。松井さんとRAWAの女性が一緒に写っている写真を見ながら、「この女性を知っている?」と尋ねると、「RAWAではお互いの安全のために、顔を合わせることはないので、わからない」とシャミームさん。タリバーン政権下、非合法で活動を続けている現実を突きつけられた思いでした。

初来日で印象に残ったことを尋ねると、高校生が涙を流して聞いてくれたことだと話してくれました。公立学校の教員だったシャミームさんは、家族にもRAWAの活動家であることを知らせず、大学院に行くと言って地元を離れたそうです。しかしアフガニスタンではいま、女子・女性の教育を受ける権利が厳しく制限され、さらに就労制限、美容室閉鎖、遠出の際の親族男性の同伴義務…。「タリバーン支配下で女性が声をあげることは、日本では考えられないほどの危険を伴う」と訴えました。そして、「国際公聴会のような、経験を共有する機会が欲しい」と希望を語りました。暴力による支配をなくすために命がけで闘う世界の女性たちの経験を共有する場、それはますます必要になっているように思います。