日本軍「慰安婦」被害者の名誉回復のための公式謝罪及び賠償要求決議
ソウル特別市議会は、第2次大戦の期間中に、日本帝国主義の軍隊が、当時朝鮮人女性をはじめとしてアジア諸国の女性たちを強制動員したり拉致し、性奴隷(「慰安婦」)化したことに対し、
2007年、米国下院の決議案採択を皮切りに、欧州議会、オランダ、カナダで決議案が採択されるなど、全世界的に日本の公式謝罪と賠償そして後世のための教育が必要だという国際的な認識が、具体的に広がっていることを鼓舞的と考え、
特に2008年3月以後、日本の宝塚市議会、清瀬市議会などの地方自治体で「『慰安婦』問題に対する政府の誠実な対応」を要求する請願と意見書が採択された点を歓迎し、
1993年のウィーン国連世界人権大会以後、国連人権委員会を中心に、2008年6月に至るまでの去る15年間、国際社会で持続的に提起されてきた、日本国に対する「慰安婦」問題の解決を促す多角的な勧告を、日本政府が受け入れずにいるという点に、深刻な憂慮を表し、
「慰安婦」被害生存者の健康状態が甚だ悪化し、生存者の数が急激に減っている現状況で、日本軍「慰安婦」被害者の名誉回復のために、次のとおり決議する。
1. ソウル特別市議会は、日本軍「慰安婦」被害者の名誉回復のために、1930年代から第二次大戦にいたる期間中に、アジア・太平洋地域の女性たちを日本帝国主義の軍隊の性奴隷化したことに対し、被害者たちに日本政府が公式に謝罪することを促す。
2. ソウル特別市議会は、日本軍「慰安婦」被害者の実質的名誉回復がなされるようにするため、日本政府が反人権的犯罪行為につき、日本国内の歴史教科書にその真実を十分に反映し、「慰安婦」被害者たちに対して被害賠償をすることと、日本の議会が関連法の制定を迅速に推進することを促す。
3. ソウル特別市議会は、日本軍「慰安婦」被害者の名誉回復のために、国連人権委員会と国連女性差別撤廃委員会など、国際社会の勧告のとおり、日本政府が公式謝罪、法的賠償及び歴史教科書への反映を履行するよう、韓国政府が積極的かつ明白な役割を果たすことを促す。
2010年8月13日
ソウル特別市議会議員一同
【提案理由】
第二次大戦当時、日本帝国主義の軍隊が韓国人をはじめ多数のアジア諸国の女性たちを性奴隷化した犯罪に対する公式謝罪・賠償・教育問題は、韓・日間の重要な懸案であると同時に、1993年のウィーン世界人権大会以来、国連を中心に全世界的に深刻に提起されている問題である。
周知のように、1993年の世界人権会議で採択されたウィーン人権宣言及び行動綱領38条は、武力紛争下における女性の人権侵害、とりわけ殺人、組織的強かん、性奴隷そして強制妊娠を含むこの種の侵害は、特別に効果的な対応が必要であることを宣言しており、これを始まりとして、
1995年の国連世界女性会議北京行動綱領で、武力紛争下の強かんに対する処罰と賠償の必要性の究明、1996年と1998年の、日本軍「慰安婦」被害者の名誉回復と法的賠償責任が日本政府にあるという、国連人権委員会報告書の採択、2003年の国連女性差別撤廃委員会での日本当局への「戦時『慰安婦』」問題に対する、長期的な解決策の摸索のための努力の勧告、直近では2008年の、国連人権理事会第8回本会合で、日本政府に「慰安婦」問題解決のために、国連の勧告に真摯に応じ、具体的な方法を用意することを促す報告書の採択、そして2006年、戦時下の女性に対する性暴力問題を含む女性への暴力に関する国連事務総長の報告書の発表に至るまで、国際社会は日本軍「慰安婦」問題と関連して、持続的かつ明確な立場を取ってきた。
このような世界的な共感に基づいて2007年だけでも米国、欧州議会、カナダ、オランダで決議案が採択され、2008年には日本国内でも地方自治体の請願と意見書の採択など、「慰安婦」問題解決を促す前向きな流れが形成されている状況である。
大韓民国国会は、日本政府の法的責任を明示した、日本国の「戦時性的強制被害者問題解決の促進に関する法律」の制定を促す決議案を2003年2月26日に議決して、日本国議会に送付したことがあり、2007年、米国下院での「慰安婦」決議案の採択を支持する支持決議案を、国会女性家族委員会で議決した。
ところがまさに大韓民国が日本軍「慰安婦」問題の最大被害国の一つであるにもかかわらず、大韓民国の名で日本軍「慰安婦」被害者の名誉回復のための、日本国の公式謝罪と被害賠償及び教科課程への反映を促す内容の決議案は、いまだに採択されていないのが実情である。去る17代国会期間中に提案された謝罪と賠償を要求する3件の決議案は、採択されないまま、任期満了で廃案となった。
1993年以来、日本軍「慰安婦」被害者として登録された計234人の生存者のうち、すでに135人も死亡し、99人だけが生存している状態であり、認知症にかかるなど健康状態が悪化している。日本軍「慰安婦」被害者たちが直接立ち上がった日本大使館前の水曜デモは、1992年1月8日に始まり、2008年10月8日(水)現在、満16年を超えて834回に至っており、2006年7月5日には当時の生存者109人の名で、「慰安婦」被害者の名誉回復のために努力しない政府に対し、憲法訴願審判請求をした状態である。その上、韓国挺身隊問題対策協議会と韓国労働組合総連盟、全国民主労働組合総連盟は、2008年8月31日に共同でILO基準適用専門家委員会に、「強制労働禁止条約」違反の事例である日本軍「慰安婦」問題解決のための訴えと要請を込めた報告書を、1995年に続き提出した状態である。
日本軍「慰安婦」被害者問題は、現存する被害者たちの名誉回復の問題であると同時に、さらには戦時女性に対する拉致、強姦、集団性暴力と人身売買という最悪の女性人権侵害事件として、世界史的に警鐘を鳴らさなければならない重大な事案であるだけに、日本軍「慰安婦」被害者の名誉を回復し、今後同一事件が世界史上再発しないよう、女性の人権に対する尊重意識を、現在の世代と未来世代に植え付けるために、同決議案を提案するところである。
(翻訳:森川静子・梁澄子)