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戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

リンク集:ユネスコ「世界の記憶」と〈「慰安婦」の声〉

「日本軍「慰安婦」の証言をはじめとした関連記録を、ユネスコ「世界の記憶」に登録しよう! 」

そう韓国からの呼びかけがあったのは2015 年でした。それから10年。日本政府の妨害もあって登録手続きが止まっていましたが、今年「対話」がなされると産経新聞が報じました。

ユネスコ「世界の記憶」とは? 登録申請の手続きや、これまでの経緯とは?

日本語では論文も情報も多くありません。そこで、ユネスコ「世界の記憶」と「慰安婦」関連記録の流れがわかるリンク集をつくってみましたのでどうぞご活用ください。内容には正確を期すよう努めましたが、間違いがあればぜひご教示ください。情報提供も歓迎しています。なお、このリンク集は随時、修正・追加をしていきます。

公開日:2025年4月6日

1 日本軍「慰安婦」関連記録の登録申請について知る

1-1 『wamだより』から

wamの取り組みに焦点をあてた経緯をまとめています。まずこちらをお読みください。

参考:記録の力で人権侵害にどう立ち向かうか:朝日新聞GLOBE+
2017年11月3日にwamが主催した国際シンポジウム「国家による人権侵害の記録をどう保存していくのか」で基調講演してくれたトルディ・ハスカンプ・ピーターソンさんのインタビューが掲載されています。

1-2 登録申請書

2016-2017サイクルの登録申請書132件(2016年5月末日締切)は、今までどおりユネスコのウェブサイトに掲載されましたが、まもなく削除。保留となっている「慰安婦」関連登録申請は現在、「対話」に向けて非公開となっています。ここではID番号とタイトルのみを掲載します。

  • ID 2016-101 ‘Voices of the ‘Comfort Women’(〈「慰安婦」の声〉)
    申請者:International Committee for Joint Nomination of the Documents on Japanese Military ‘Comfort Women’
  • ID 2016-76  Documentation on “Comfort Women” and Japanese Army discipline (「慰安婦と日本軍の規律に関する文書」)
    申請者:Individual Japan-United States of America (NGO’s)

1-3 登録申請団体の情報

1-3-1 ID 2016-101 〈「慰安婦」の声〉登録申請団体

日本軍「慰安婦」関連記録物のユネスコ世界記憶遺産共同登録のための国際連帯委員会
〈「慰安婦」の声〉登録申請団体の公式ウェブサイト。日本語が選べます。

関係者による論文等

1-3-2 ID 2016-76 〈慰安婦と日本軍の規律に関する文書〉登録申請団体

公式ウェブサイトは見当たりませんが、登録申請団体の声明を参考にした申請団体は以下。それぞれ「世界の記憶」に関連する投稿やイベント等が掲載されています。

「慰安婦と日本軍の規律に関する文書」について掲載されているサイト等

1-4 「対話」勧告

国際諮問委員会(IAC)による「対話」勧告は、2017年10月30日付でユネスコのウェブサイトに掲載されました。日本語仮訳は以下。

対話実施のための延期を勧告
2016-76 日本・米国の個人(NGOs) 〈慰安婦と日本軍の規律に関する文書〉
2016-101 日本軍「慰安婦」関連記録物のユネスコ世界記憶遺産共同登録のための国際連帯委員会〈「慰安婦」の声〉
「世界の記憶」プログラム国際諮問委員会は、ユネスコ執行委員会の2017 年10 月16 日の会議における決定(202EX/PX/DR 15.8, item 15)を踏まえ、ユネスコ事務局長に対し、申請番号101 番「『慰安婦』の声」と申請番号76 番「『慰安婦』と日本軍の規律に関する文書」の申請者その他の関係者間で対話を促進するよう勧告する。国際諮問委員会はまた、あらゆる関連文書をできうる限り受け入れられるよう、共同申請につながることを目指して、この対話のためにこれらの関係者にとって都合のいい場所と期日を設定するよう勧告する。

参考:原文出典
International Memory of the World Register Recommended Nominations List 2016-2017
2017年10月24-27日にパリのユネスコ本部で開かれた「世界の記憶」国際諮問委員会(IAC)による2016-2017年の「世界の記憶」国際登録推薦リスト。この文書の最後に「慰安婦」関連記録についての「対話」勧告が掲載されています。なお、上記PDFには日付がありませんが、2017年10月30日付「世界の記憶」国際諮問委員会(IAC)の2016-2017年の国際登録についての勧告のお知らせにリンクがありました。

1-5 ユネスコ執行委員会での決定

ユネスコの意思決定は全加盟国(194ヵ国)による総会(2年に1回)の他に、地域別の58ヵ国による執行委員会(1年に2回)があります。2017年10月、「世界の記憶」国際諮問委員会に先立って開催された第202回ユネスコ執行委員会で採択された決定には、「「世界の記憶」プログラム審査プロセスに関する国際諮問委員会(IAC)最終報告書」が含まれており、そこには2016-2017年のサイクルの申請(〈「慰安婦」の声〉を含む)については、これまでのルールで実施するように求めた項目があります。関連する部分の抜粋・仮訳は以下。

15 「世界の記憶」プログラム審査プロセスに関する国際諮問委員会(IAC)最終報告書(202 EX/15; 202 EX/50)
〔1-6は略〕
7 また、2016-2017年の登録サイクルは、「世界の記憶」プログラムの既存の規則に従い、かつ上記第3項に示した同プログラムの主要目的に沿って進めるよう、事務総長に要請する。
8 事務局長、国際諮問委員会の委員、および「世界の記憶」プログラムのすべての関係者に対し、対話、相互の理解と尊重の原則を遵守し、同プログラムに関する政治的緊張をこれ以上高めないよう求める。

注:「上記第3項」とは、2015年11月17日 第38回ユネスコ総会で採択された「デジタル形式を含む記録遺産の保護及びアクセスに関する勧告」の序文を引用した部分。「平和を促進し、並びに自由、民主主義、人権及び尊厳を尊重するため、より深い理解及び対話のための知識の共有を促進するための記録遺産の重要性を強調し」、同時に、「記録遺産の保護及び記録遺産への長期間のアクセスの可能性が、人権と同様に、意見、表現及び情報の基本的自由を支持するものであることを考慮する」との、同勧告で表明された「世界の記憶」プログラムの目的を再確認するもの。

原文出典:
Decisions adopted by the Executive Board at its 202nd session
Document code: 202 EX/DECISIONS
(該当箇所はPage 20参照)

1-6 新聞報道から

当時の新聞記事のリンクは切れているものも多く会員限定が多いですが、参考まで。

2017年10月27日
ユネスコ:「慰安婦、関係国対話を」 世界記憶遺産見送り | 毎日新聞

2017年10月27日
世界記憶遺産:政治的対立を回避 「慰安婦」登録見送り | 毎日新聞

2017年10月31日
ユネスコ:「世界の記憶」に上野三碑 「慰安婦」は見送り | 毎日新聞

2017年10月31日
慰安婦問題、ぬぐえぬ韓国不信 ユネスコ登録先送り – 日本経済新聞

1-7 文科省ユネスコ関連議事録から

文科省のウェブサイトにある関連議事録です。情報はほとんど公開されていません。

ユネスコ記憶遺産選考委員会(2013-2015年)
2015年8月以降、議事録は「公開することにより会議の公平かつ中立な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるため、非公開」となっています。「慰安婦」関連の動きがあった2016-2017の頃の議事録はウェブサイト上には見つかりません。

「世界の記憶」国内案件に関する審査委員会(2021年~)
新しいルールのもとでの「世界の記憶」の国内申請の審査議事録。こちらもほとんどが非公開です。

ユネスコ国内委員会総会
第138、139、140回(2016年2月、7月、2017年2月)の議事録に松浦晃一郎日本ユネスコ国内委員会特別顧問(前ユネスコ事務局長)等の発言に関連する記載があります。

参考:

2 ユネスコと「世界の記憶」について知る

2-1 文部科学省のサイトから

日本語では、文部科学省のサイトが基本情報になります。極めて分かりづらい構造ですが、サイトマップから「その他」→「国際関係」から「日本ユネスコ国内委員会」に移動すると、基本情報へのリンクがあります。

2-2「世界の記憶」のルール変更について知る

2-2-1 新聞記事からみる

まずは新聞記事でざっくり流れを追ってみましょう。

2021年4月15日
ユネスコ「世界の記憶」制度議論へ 異議申し立て可能に:朝日新聞

2021年4月16日
「世界の記憶」審査方法議論 日本政府、見直し要求:朝日新聞

2021年4月16日
「世界の記憶」反対あれば登録せず ユネスコが制度変更:朝日新聞

2021年4月17日
「世界の記憶」改革案を承認 ユネスコ、当事国反対なら登録せず 「南京」契機、日本側働きかけ:朝日新聞

2021年5月13日
(いちからわかる!)ユネスコ「世界の記憶」、登録方法が変わるの?:朝日新聞

2025年3月4日
「世界の記憶」、選考方法を変更 文科省主導で候補リスト化

2-2-2 基本文書を見てみる

「世界の記憶」には、国際登録、地域登録、国内登録があります。〈「慰安婦」の声〉が申請している国際登録のためのルールは2021年に大きく「改正」されました。ここでは、〈「慰安婦」の声〉が申請した国際登録のうち、基本的なルールを定めている「一般指針」と「登録の手引き」について、2016年当時の文書、および、2021年「改正」後の文書のリンクを紹介します。

2021年現在

2016年当時

3 参考文献・サイト等

このテーマに関する日本語でのわかりやすい文献は、なかなか見つかりません。英語での関連するものを掲載しておきます。

3-1 参考サイト・論文

国際記録遺産センターウェブサイト International Centre for Documentary Heritage
ユネスコが後援する「国際記録遺産センター」が発行するInternational Journal of Documentary Heritageには、関係論文がオープンアクセスで掲載されています。例えば、“The Future of the UNESCO Memory of the World Programme – Discussion Paper” は、「世界の記憶」のルール変更の経緯がわかります。日本語仮訳取り組み中。

3-2 南京関連

中国による「南京大虐殺」登録申請書
2015年に登録された南京大虐殺関連記録の登録申請書です。参考文献として。

 

 

 

日本軍「慰安婦」アーカイブズ
女性国際戦犯法廷アーカイブズ

日本軍慰安所マップ

日本軍「慰安婦」関連公文書

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