日本語 English
戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

【11/3】国家による人権侵害の記録をどう保存していくのか~公文書管理と草の根アーカイブズの課題

画像をクリックするとPDFが開きます。

===============================
wam国際シンポジウム
国家による人権侵害の記録をどう保存していくのか
―公文書管理と草の根アーカイブズの課題
===============================
日 時:2017年11月3日(金・祝)13:30~(13時開場)
場 所:在日本韓国YMCA 9階ホール
   (東京都千代田区猿楽町2-5-5
参加費:1000円
2009年に制定された公文書管理法では、公文書は健全な民主主義を支える「国民共有の知的資源」として位置付けられました。しかし、森友・加計問題、南スーダン日報隠滅を通じて見えてきたのは、公文書の保存や処分が政治家や官僚といった公務員の裁量に左右され、都合の悪い文書は平気で廃棄する姿です。2013年の秘密保護法制定はそれに拍車をかけているようにもみえます。
しかし、日本軍「慰安婦」制度の事実と責任者の究明を続けていた私たちにとって、この状況は不思議なことではありません。敗戦前後、政府は重要文書の焼却を命じ、天皇に関わる宮内庁管轄資料は未公開のままです。関連公文書の公開に関して、政府の態度は極めて不十分かつ不誠実でした。そもそも日本軍性奴隷制の実態は、焼却を免れた公文書だけでは把握できないことは明らかなため、被害者の証言、加害兵士や住民の証言、外国軍による記録なども含めて、私たちは日本軍「慰安婦」アーカイブズを市民の責任として実施する事業をスタートしました。
公文書は国民・市民のものであるという認識が薄い日本では、公文書館は諸外国に比べて100年遅れていると言います。その一方で、民衆レベルではさまざまな活動の記録が保管されてきました。この国際シンポジウムでは、その中でも、国家による人権侵害に関する記録をどう保管し、公開していくのか、国際的な動きに詳しい専門家からご報告いただきます。そして、日本での公文書管理の実態、草の根アーカイブズ活動の実践報告をもとに、大事な記録を次世代に引き継ぐための私たち市民の役割を議論していきたいと思います。どうぞふるってご参加ください。
 
[基調講演]
トルディ・ハスカンプ・ピーターソン
「人権侵害とアーカイブズの役割-国際的潮流」
[パネリスト]
小川千代子
「日本の公文書管理―国および地方自治体の現状」
安藤正人
「日本の草の根アーカイブズ活動―沖縄県伊江島からの報告」
 
[講演者紹介]
トルディ・ハスカンプ・ピーターソン Trudy Huskamp Peterson
歴史学博士(アイオワ大学)、CA(米国アーキビストアカデミー公認アーキビスト)。米国国立公文書館で24年間勤務し、1993-1995年には米国国立公文書館記録管理庁長官代理を務める。オープン・ソサイエティ・アーカイブズの設立ディレクター、国連難民高等弁務官事務所のアーキビスト等を歴任、現在はアーカイブズ専門のコンサルタント。南アフリカやホンジュラスの真実委員会、シエラレオネ特別法廷、マーシャル諸島核賠償請求裁定委員会、グアテマラ警察アーカイブズなどでコンサルタントを務め、研修も実施する。元米国アーキビスト協会会長。ICA(国際文書館評議会)人権ワーキンググループの元代表、現在は毎月発行するニュースレターを編集。主な著書に“Final Acts: A Guide to Preserving the Records of Truth Commissions”(20の真実委員会の記録に関する研究)、“Temporary Courts, Permanent Records”(5つの臨時国際刑事法廷の記録に関する研究)など。
安藤正人 ANDO Masahito
東京大学、同大学院で日本近世史を学んだ後、1977年から2008年まで国文学研究資料館史料館(アーカイブズ研究系)に勤務して全国の史料調査に従事。この間、ロンドン大学大学院に留学、2008年に同大学博士号(アーカイブズ学)取得。2008年4月、新設の学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻に赴任、2017年3月退職。主な著書に『記録史料学と現代』『草の根文書館の思想』『アジアのアーカイブズと日本』など。近年の研究テーマは「アジアの戦争・植民地支配とアーカイブズ」。
小川千代子 OGAWA Chiyoko
東京都立大学卒業後、一般企業、東京大学百年史編集室編集事務、国立公文書館勤務を経て、1993年に「国際資料研究所」を設立。専門は記録管理、電子記録長期保存。1996年より大学でも教鞭をとる。2017年5月まで記録管理学会会長。1989年にCA(米国アーキビストアカデミー公認アーキビスト資格)取得、ICA(国際文書館評議会)の円卓会議役員(1992-1996)・専門家団体部会役員(2000-2008)。主な著書に『世界の文書館』、『電子記録のアーカイビング』など。 1995年よりアーカイブの専門誌『DJIレポート』を国際資料研究所から継続発行している。
主催:アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)
[wamとは]
戦時性暴力、とりわけ日本軍性奴隷制の被害と加害を記録し、記憶と活動の拠点となることを目指して2005年8月に開館したミュージアム。日本軍性奴隷制に関する特別展を1年ごとに開催、教育事業、調査活動、被害者の人権回復のため連帯行動を行う。2015年度から日本軍「慰安婦」に関する証言、映像、写真など様々な記録を次世代に伝えるための「日本軍『慰安婦』アーカイブズ」事業をスタート、ユネスコ「世界の記憶」への日本軍「慰安婦」関連資料登録に向けた日本委員会の一員でもある。