wamは、5月15日に「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWW RAC)、アジア女性資料センターの2団体との連名で、橋下市長への抗議声明を提出しましたが、日本で唯一の、戦時性暴力の被害と加害を記憶し記録する資料館としての見解を伝えるために、改めてwam単独での抗議声明を送りました。
抗議声明と一緒に、wamの紹介リーフレット、wam第10回特別展チラシも届けました。
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抗議声明
日本維新の会共同代表・橋下徹大阪市長の発言に抗議し、謝罪と発言撤回、退陣を求めます
2013年5月13日の大阪市庁舎での記者会見で、大阪市長であり、政党の共同代表であるあなたは、かつて日本軍がアジア全域に慰安所を作り、アジア各地の女性たちを性奴隷にして強かんを繰り返した日本軍「慰安婦」制度を「必要だった」と述べました。「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、精神的にも高ぶっている猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度が必要なのは誰だってわかる」と言ったのです。これを聞いて私たちは、激しい怒りを抑えることができませんでした。それは、今も心身の傷に苦しんで尊厳の回復を求めている被害者たちを、一層深く傷つけるものだからです。女性を戦争の道具とし、性暴力を肯定することは、全ての女性を冒とくし、女性の人権を著しく侵害するのだということを、あなたはご存じないのでしょうか。
あなたの“「慰安婦」制度必要論”は、各地におびただしい数の慰安所を作った旧日本軍の論理そのものです。1937年の「南京大虐殺」では多数の強かん事件が発生し、中国の人々の反日感情の高まりと国際的な非難の声を抑えようとした軍の上層部は、強かん防止のためにも慰安所の設置を急ぎました。これが中国各地に慰安所が作られるようになったきっかけです。しかし、慰安所の設置は兵士の「性的な欲求を解消」するどころか、更なる強かん事件を生み出しました。
あなたは、「当時の歴史を調べたら、日本国軍だけでなく、いろんな軍で(慰安婦を)活用していた」と言っていますが、日本軍のように戦地や占領地の全域に、それも15年以上もの長期間、慰安所を設置・運営し、占領地や植民地の女性たちを監禁して強かんし続けた国は世界に見当たりません。万が一そのような軍隊が他国にあったとしても、だからと言って日本軍の犯罪が許されるわけではありません。また、あなたは繰り返し、「軍や官憲による、慰安婦の強制連行を示す証拠は無かった」と主張しますが、被害者の証言から分かる事実に、なぜ向き合うことができないのでしょうか。
私たち資料館は7年にわたり日本軍「慰安婦」制度の被害と加害の事実について記憶し記録する活動を続けています。アジア各地で被害に遭われた、たくさんの女性たちの証言から分かるのは、彼女たちが意に反して慰安所へと連行され、強かんされた事実です。そして休暇を取ることも、辞めることも、逃げることも許されず、強かんされたという事実です。日本軍が制度として慰安所を設置・管理・運営したことが持つ意味を直視してください。
日本軍が「慰安婦」制度を作り上げて女性たちを犠牲にしてきたことは歴史的な事実として、世界の人々が知っています。戦時性暴力が重大な人権侵害で、根絶すべき戦争犯罪であるということもすでに国際的に認知されてきました。このような戦争犯罪を肯定する人が公職にあり、衆議院では第3にある党の共同代表であることに、私たちは恥ずかしさと強い憤りを覚えます。
さらにあなたが沖縄の普天間基地を視察した時、米軍の司令官に、「もっと風俗業を活用してほしい」と発言し、「ばかげている」といなされました。しかしあなたは、「アメリカはずるい。アメリカは一貫して、公娼制度を否定する。しかし米軍基地の周囲で風俗業が盛んだったことも歴史の事実」と開き直っています。このように差別的で人権を無視し、旧態依然とした性意識が染み付いている人が、政治的リーダーであることに大きな恐怖をおぼえます。
私たちはあなたの発言に対して激しく憤り、強く抗議します。
直ちに「慰安婦」被害者を深く傷つけたことを謝罪し、発言を撤回してください。
そして大阪市民とすべての日本人に対して、公職にあるまじき発言を繰り返したことを謝罪し、その責任をとって退陣されることを求めます。
2013年5月17日
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)
運営委員一同 館長池田恵理子