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戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

第13回特別展 「アジア解放」の美名のもとに インドネシア・日本軍占領下での性暴力

会期:2015年7月1日(水)―2016年6月26日(日)

1942年3月、日本軍は蘭印軍を破り、蘭領東インド(現在のインドネシア)を占領統治しました。「アジアの解放」をスローガンに掲げた日本軍でしたが、資源と食糧を奪い、男たちを戦場へ動員し、女たちを性奴隷にするという、むき出しの暴力による圧政に、人びとは日本の真意を見抜いていきました。

「ロームシャ」「ヘイホ」「バケロー」などの言葉とならんで、今では「イアンフ」も日本の軍政期の恐ろしい体験を表す言葉として、インドネシアの人びとの間で語り継がれています。日本軍による性暴力を「恥」と考え、口を閉ざしてきた女性たちが、長い沈黙を破り語り始めたからです。

この特別展では、インドネシア、オランダ、韓国、台湾の合わせて70人以上の女性たちの証言から、慰安所での被害を含む日本軍の様々な性暴力の実態を伝えます。被害証言の隣には日本兵の手記を並べました。兵士が記憶する「慰安婦」と被害女性の言葉、そのギャップの意味を考え、加害に向きあうきっかけにしてほしいと願っています。

【主な展示内容】

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  • インドネシアの歴史と文化
  • オランダによる植民地支配
  • 日本軍の侵略と民衆の動員、性暴力の実態
  • インドネシア女性とオランダ系女性の性暴力被害と戦後
  • インドネシア・日本軍による性暴力被害マップ:被害証言、元兵士の手記、公文書から
  • 戦後インドネシアと人権:軍事強権体制のなかでの女性・民衆への暴力

パネルの訂正について
wamで現在開催中の第13回特別展「アジア解放の美名のもとに~インドネシア・日本軍占領下での性暴力」において展示中のパネル記述の訂正を行いました。

訂正を行ったのは「インドネシアの慰安所と性暴力」というパネルの一節です。
Twitter上で来館者からのつぶやきがあり、またメールでの訂正を求めるご意見をいただきました。ご指摘はとても重要な内容で、急ぎ制作過程を振り返り、wam運営委員会でパネルの制作担当者と相談して、以下の通り文章を訂正しました。

(修正前)
日本の敗戦によって「慰安婦」は自由になりましたが、故郷へ帰れない女性もいました。イスラム教には、強かんされた女性は「家族の名誉を傷つけた」として、父親や兄弟が女性を殺害する風習があり、家に戻っても周囲から白い目で見られたり、排斥されることが少なくなかったからです。多くの女性は過去を隠して暮らし、病気に苦しみ、結婚ができても不妊に悩むなど、性暴力によって受けた心身の傷は生涯に及びました。

(修正後)
日本の敗戦によって「慰安婦」にされた女性たちは自由になりましたが、故郷へ帰れない人もいました。強かんされた女性は「家族の名誉を傷つけた」とする地域社会において、家に戻っても周囲から白い目で見られたり、排斥されることが少なくなかったからです。多くの女性は過去を隠して暮らし、病気に苦しみ、結婚ができても不妊に悩むなど、性暴力によって受けた心身の傷は生涯に及びました。

いただいたご指摘は、
・名誉殺人は一部地域の地域的な風習であり、宗教とは無関係である
・インドネシアにはそのような習慣はない
・イスラム教には、強かんされた女性の殺害を正当化する教義は存在しない
というものでした。

指摘の通り、「名誉殺人」は宗教に関係なく、一部地域に存在する地域的な風習と考えるのが適切です。そして、インドネシア社会には「名誉殺人」の風習はありません。ここに上記の記述を訂正し、パネルの修正を行ったことをご報告します。

イスラム教徒への差別や迫害が世界中で問題になっている現在、宗教に関する誤った情報の流布はあってはならないことです。今後は一層気を引き締めて、専門家の方々のお力も借りながら、しっかりとした事実を伝えていきたいと思います。

アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)運営委員一同


【カタログ】

wamカタログ12
「アジア解放」の美名のもとに~インドネシア・日本軍占領下での性暴力