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戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

ハーバード大学 ラムザイヤー教授問題に関するリンク集

ハーバード大学ロースクールのジョン・マーク・ラムザイヤー教授の日本軍「慰安婦」に関する論文について、韓国や米国など英語圏で大きな批判や議論が起こっています。日本軍性奴隷制の被害と加害を伝えるミュージアムを日本で運営するwamでは、有名大学の教授であっても、日本軍性奴隷制のもとで女性たちが受けた性暴力被害を認めない、あるいは過小評価するといった主張に日々接しているため、「またか」という思いがありました。
しかし、2021年1月下旬の産経新聞の報道をきっかけに韓国メディアで炎上、その後は米国など英語圏の研究者によって厳しく批判がなされるようになりました。これら研究者による意見表明は、研究者として責任を果たそうとする真摯さ、アカデミズムの倫理を守ろうとする熱い思いが感じられ、とても勇気づけられるものでした。
一方、加害国の日本では産経新聞など歴史修正主義的なメディアが若干揶揄的にとりあげるだけで、現時点ではほとんど報じていません。ニューヨーク・タイムズなどの米紙が大きく報じるなか、日本の大手マスコミがなんら報じない状況は「沈黙」しているようにさえ感じるようになりました。そこで、韓国や英語圏での情報を渉猟できているわけではありませんが、ラムザイヤー教授による論文をめぐって何が起きているかについて、リンク集という形をとりながら、わかる範囲で簡単に説明を付したものを準備しました。
現在は、ほとんどの議論が韓国と英語圏で行われていますが、日本の歴史学会等から声明が発表されたら紹介していきたいと思います(追記:2021.3.10に日本の学会等が声明を発表、下記にリンクがあります)。また、事実や認識に間違い等があればwam事務局までお知らせください。

(1)発端:産経新聞の記事

「慰安婦」問題だけでなく、部落や在日の問題など、歴史が深く関わるテーマに関するラムザイヤー教授による論文は、数年前から問題視されていました。しかし今回の炎上したきっかけは、ラムザイヤー教授による論文が査読のある学術雑誌に掲載されることになった、そのことを産経新聞が報じたことだと思われます。
2021年1月28日の産経記事

産経新聞は、その少し前から産経新聞およびその英語版ともいえるJapan Forwardにラムザイヤー教授の論文を掲載しています。掲載のタイミングは、2021年1月8日のソウル中央地裁判決(日本軍性奴隷制については主権免除を認めなかった)の直後です。論点を法的責任から歴史の事実に逸らそうとする思惑があったのかもしれません。
2021年1月25日 【JAPAN Forward 日本を発信】偽善と歪曲を斬る
2021年1月12日 Recovering the Truth about the Comfort Women

(2)問題となっているラムザイヤー教授の学術論文

問題となっているラムザイヤー教授の論文は”Contracting for sex in the Pacific War”とのタイトルの論文で、International Review of Law and Economics という学術誌の2021年3月号(Volume 65)に掲載される予定のものです。オンラインではすでに公開されていますが、現在は上記の論文の歴史的証拠について懸念が提起されているため調査中である、とウェブサイトに記載されています。
追記:International Review of Law and Economics から、2021年3月9日付けで新しい懸念の表明が出されています。

(3)研究者/市民による声明・反論

英語圏の研究者によって、問題点を指摘する声明や書簡などが多数発表され、ウェブサイトに公開されています。
ほとんど英語ですが、取り組みの誠実さが感じられるのでぜひ見てみてください。

ハーバード大学ライシャワー日本研究所の声明 (日本語説明)  *2021.3.15付にリンクを更新しました。
ハーバード大学のAndrew Gordon教授、Carter Eckert教授の声明 (英語)

懸念する研究者による共同検証(英語)
文献や引用のしかたから学術的な問題点を指摘した労作。この論文の最後にはラムザイヤー論文の日本語抄訳もあります。
その作業をした研究者による日本語でのツイッターのまとめ も参考になります。

UCLAのMichael Chwe教授のページ(英語)
ラムザイヤー教授の「慰安婦」関連論文をめぐるポータルサイトとしてはとても包括的で便利。
イベントやマスコミ報道も逐次掲載しており、アップデイトも早いので、このサイトを時々チェックすると動きが入手できます。

・一例として、日本でよく知られているテッサ・モーリス・スズキさんによる出版社への書簡(英語)や、授業に使える素材(study aid)(英語)があります。

憂慮する経済学者による書簡 (日本語訳)には、すでに3500人以上が署名をしています。
経済学者、法学者などのカテゴリーで署名した人のリストもわかります。
FAQには「ゲーム理論」「契約理論」とは何かを簡潔に説明し、それらの点からラムザイヤー論文の問題点を指摘しているのも興味深いです。
この書簡についての日本語での簡単な解説はこちら

The Asia-Pacific Journal: Japan Focus
日本研究やアジア太平洋研究ではよく知られているウェブサイトでも特集しています。
研究者の名前を知らないとわかりづらいかもしれませんが、書き下ろしも多くて読みごたえがあります。

新たな装いで現れた日本軍「慰安婦」否定論を批判する ― 日本の研究者・アクティビストの緊急声明 ―
2021.3.10 Fight for Justice(日本軍「慰安婦」問題webサイト制作委員会)、歴史学研究会、歴史科学協議会、歴史教育者協議会による共同声明

The Reception of the Ramseyer ‘Comfort women’ article in Japan: Historical and Political Background  by Tessa Morris-Suzuki
2021.3.22 New!テッサ・モーリス・スズキさんによる「日本におけるラムザイヤー慰安婦論文の受けとめ:歴史的・政治的背景」は、
日本政府や歴史修正主義者によるこれまでの動きが正確かつ簡潔にまとめられています。「慰安婦」問題をめぐる状況を英語圏の人に説明するのに最適です!

(4)ラムザイヤー教授による「慰安婦」問題以外の論文とその問題点

●被差別部落

被差別部落に関する論文にもデータの扱いに関する問題が指摘されています。
On the invention of identity politics:The Buraku Outcastes in Japan「でっちあげられたアイデンティティ・ポリティクス:日本の部落アウトカースト」
このディスカッションペーパーをもとに若干の加筆修正がなされた論文が、査読のある学会誌Review of Law & Economicsに掲載されました。
⇒この論文の問題点を早くから指摘している角岡伸彦さんのブログ「五十の手習い」の該当ページはこちら。
⇒2021.3.7付 Review of Law and Economics 編集長宛書簡 日本語 英語
大阪市立大学人権問題研究センターの阿久澤 麻理子さんと齋藤 直子さんによる社会学の視点からの解説です。
⇒2021.3.8付 反差別国際運動(IMADR)声明「部落に関するラムザイヤー論文の問題点―人権と反差別の視点から」 *賛同も募集中!

●沖縄

沖縄に関する論文の問題点について、沖縄タイムズがトップで報じました。
2021年2月28日 米ハーバード大教授「基地反対は私欲」「普天間は軍が購入」 大学ウェブに論文、懸念の声
被差別部落、在日、沖縄、に関するラムザイヤー論文の原文はこちら

●在日

在日、とりわけ済州4.3事件に関する論文でも問題点が指摘されています。
⇒ブログ「済州四・三73周年大阪慰霊祭」の該当ページはこちら。


(5)ラムザイヤー教授について

ラムザイヤー教授の経歴はこちら。

なお、ラムザイヤー教授の肩書に「三菱」が付されていますが、ハーバード大学は相当数の寄付者を冠した教授職があるようです。
以下の大部のリストの444頁には、ラムザイヤー教授が1998年からその立場にあることが書かれています。
Harvard University Named Chairs 1991-2004

1972年に三菱がハーバード大学に寄付した際のニューヨーク・タイムズの記事はこちら

 

(6)報道

・2021.2.25付 【英語】ニューヨーカー Seeking the True Story of Comfort Women
この記事の正式日本語訳が掲載されました。2021.3.13付 【日本語】慰安婦の真実を追い求めて

・2021.2.26付 ニューヨーク・タイムズ 【英語】A Harvard Professor Called Wartime Sex Slaves ‘Prostitutes.’ One Pushed Back.
この記事についての日本語での要約はこちら

日本のメディアによる報道 

・2021.3.26付 AERAdot. 慰安婦だけでなく部落問題でも 米ハーバード大教授の論文に「撤回要求」相次ぐ

・2021.3.30 HUFFPOST 「慰安婦」めぐるハーバード大のラムザイヤー論文、撤回を求める声相次ぐ。国際的に波紋

・2021.3.31 神奈川新聞 米教授「慰安婦」論文が波紋(上) *有料会員のみ全文閲覧可能
2021.4.1 神奈川新聞 米教授「慰安婦」論文が波紋(下) *有料会員のみ全文閲覧可能

 

 

*リンク集は追加訂正を含め、随時更新していきます。