日 時:2018年9月26日(水) 18:00~20:00
場 所:wamオープンスペース
参加費:800円
講 師:大串和雄さん(東京大学法学部教授)
軍事独裁政権下で行われた重大な人権侵害の加害者を裁く、その実践がラテンアメリカの国々で積み重ねられています。例えばアルゼンチンでは、民政移管後に加害者の訴追を限定的にする法律がつくられ、軍の高官が裁かれた場合も、その後に大統領が特赦で解放してきました。しかし、2000年以降、それらの免責法や特赦を違憲にする判決が国内の裁判所で出され、国会でも免責法を無効化する法律を採択、2017年までに人道に対する罪で3000人が訴追され、性暴力も人道に対する犯罪として裁かれるようになりました。
10月には、正義を求めて粘り強く闘ってきた3人の女性をアルゼンチンからお招きする国際シンポジウムを予定しています。その連動企画として、アルゼンチンのケースをラテンアメリカや世界全体の移行期正義の中に位置づけ、このような変化を可能にした法的・制度的背景を学ぶ機会をもつことにしました。時効の問題、国際人権条約の国内適用、強制失踪が継続的犯罪と解釈される世界的傾向、米州人権裁判所の役割など、難しそうだけれども、それらを正確に理解することなくしてこの「変化」のすごさもわからない――そこをわかりやすく、質問時間もたっぷりとって教えていただきます。
wamは、2000年に開かれた「日本軍性奴隷制を裁く 女性国際戦犯法廷」の思想を引き継いで運営するミュージアムです。和解を目的にするのではなく、いつ、どこで、だれがどのような判断をして人権侵害が実行されたのか、責任のありかを明らかにして不処罰の連鎖を断ち切ること、そしてそれらの事実を「水に流す」のではなく「伝え続ける」ことこそが、未来を拓くと考えています。裁くことの視座をあらためて学び、考えるこの機会を、ぜひお見逃しなく。
ゲスト紹介
おおぐし・かずお:専門はラテンアメリカ政治、比較政治、人権問題で、近年は特に移行期正義を研究している。著作に『軍と革命―ペルー軍事政権の研究』東京大学出版会、1993年。「罰するべきか許すべきか―過去の人権侵害に向き合うラテンアメリカ諸国のジレンマ」『社会科学ジャーナル』第40号、1999年2月。「『犠牲者中心の』移行期正義と加害者処罰―ラテンアメリカの経験から」日本平和学会編『体制移行期の人権回復と正義[平和研究 第38号]』早稲田大学出版部、2012年。『21世紀の政治と暴力』(編著)晃洋書房、2015年