アピール
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)は日本で唯一、日本軍性奴隷制(日本軍「慰安婦」制度)の被害と加害を記録し記憶する資料館として、2005年8月に開館しました。
日本軍は、中国侵略に始まりアジア太平洋戦争が終結するまで、アジア太平洋各地に夥しい数の慰安所を設置しました。しかし、連合国による東京裁判やBC級戦犯裁判ではごく一部の性暴力が裁かれただけで、日本軍性奴隷制の責任者が裁かれることはありませんでした。戦後の日本もまた、自らの手で自国の戦争犯罪を裁いてきませんでした。
2000年12月に東京で開かれた「日本軍性奴隷制を裁く 女性国際戦犯法廷」では、アジア各国・各地域での性暴力被害を明らかにし、日本軍性奴隷制度の責任者として天皇裕仁と軍高官9名に有罪判決を下しました。wamはこの「女性国際戦犯法廷」の思想を引き継ぎ、日本の戦後社会が向き合わなかった戦争責任と植民地支配責任を問い続けてきました。
2019年2月、韓国の文喜相国会議長はインタビューで、日本軍の性奴隷にされた被害者に対して「天皇陛下が謝罪すれば解消される」と発言しました。現行憲法では天皇に政治的権能はありませんが、天皇の名のもとに行われた朝鮮植民地支配の実態を考えれば、この議長の心情は当然理解できるものでした。「常軌を逸して」いたのは、日本政府やメディアによるバッシングです。
国事行為にはない「慰霊の旅」を続けながら、「昭和天皇は平和を愛していた」と繰り返し、「象徴天皇の務めが途切れることなく、安定的に続いていくこと」を目的に退位を表明した明仁を、安倍政権よりはマシであると評価することはできません。また、血統主義によって継承される天皇制は、女性が「産む機械」となることを強い、女性差別を再生産し続けています。何よりも、高齢化が進み生存者がわずかになってしまった被害女性たちが、最期まで被害事実の認定と謝罪・賠償・責任者処罰を求めていたことを思い起こすと、「新元号だ」「代替わりだ」と浮かれているわけにはいかないのです。
天皇制は、自由と平和、平等と民主主義に反する制度です。日本の戦争責任、植民地支配責任を果たすためにも、日本人が自らの手で天皇制に終止符を打つ、その歩みをみなさんとともにこれからも進めていきます。
2019年4月30日
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)