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戦時性暴力、「慰安婦」問題の被害と加害を伝える日本初の資料館

あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」を再開するため、脅迫犯らを検挙等、警察の責務を果たすよう求めます

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アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)は、8月5日に、愛知県知事、愛知県警察本部長、愛知県公安委員会委員長並びに委員あてに、以下の書簡を送付しました。

他団体の出した抗議声明・公開質問状や再開を求める署名活動の情報はこちら


愛知県知事 大村 秀章 様
愛知県警察本部長 加藤達也 様
愛知県公安委員会 委員長 柘植康英 様
同委員 後藤澄江 様
同委員 岩瀬隆広 様
同委員 那須國宏 様
同委員 小笠原剛 様

あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」を再開するため、脅迫犯らを検挙等、警察の責務を果たすよう求めます

今般、あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」に対して、「撤去をしなければガソリン携行缶を持ってお邪魔する」と脅迫するファックス等が送られてきたことを理由に、あいちトリエンナーレ実行委員会は、その企画展のひとつである「表現の不自由展・その後」を中止することを決定しました。脅迫が理由であるならば、まずは犯人検挙および来館者の安全確保こそが最優先の対策のはずです。私たちは、表現の自由を守るための最大限の努力をする前に、中止という形で収束をはかった同実行委員会の判断は、日本における自由な表現活動を困難にする可能性に道をひらくものとして深く憂慮します。

日本軍性奴隷制の加害と被害を伝えるアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)は、これまで2016年、2017年に「展示物を撤去せよ」との「爆破予告」を受けました。東京都新宿区戸塚警察署に通報しましたが、犯人はいまだに捕まっていません。しかし、私たちは、軍隊による性暴力、女性の人権侵害を伝え、二度と同じような過ちを繰り返さないために学び、考える場をこれまで守ってきました。

民主主義社会では、当然ながら異なる意見が存在します。その異なる意見を聞き、考え、議論する場を、アートを通じてつくろうとした津田大介芸術監督、そして「金は出しても口は出さない」として実施に尽力した大村秀章県知事の努力は評価したいと思います。このような取り組みを妨害して多様な意見を封じたのは、第一義的には暴力・テロ行為を予告した脅迫犯らに他なりません。

日本における表現の自由度をはかるひとつの指標である「世界報道自由度ランキング」において、日本は67位でG7のなかでも最下位です。この数字が示しているのは、新聞記者殺害事件の犯人も、天皇や国家権力を批判する表現への脅迫犯も検挙しない日本の警察の姿であり、また恐怖を感じ、あるいは忖度して表現の自由を自ら制限してきた日本のメディアや表現者たちの姿です。

日本軍「慰安婦」問題や天皇制にかかわる表現が「問題」なのではありません。「表現の不自由展・その後」をめぐる一連の経緯が明らかにしたのは、検閲をちらつかせる菅義偉内閣官房長官や河村たかし名古屋市長のような公人の発言が、日本の人々の負の感情を煽り、表現の自由を暴力によって奪おうとする脅迫犯らをも生んだことです。その意味で、「情の時代」と題した「あいちトリエンナーレ2019」において、「表現の不自由展・その後」は、中核をなす企画展であるといえるでしょう。

日本有数の規模をほこる愛知県警については、沖縄・辺野古に機動隊を送って市民の抗議活動弾圧に手を貸したとして、訴訟にもなっています。愛知県警には、警察法に基づいた本来の責務に立ち戻り、あいちトリエンナーレ2019に参加する各国のアーティストや来館者の安全を守ることこそが重要であるという姿勢を、愛知県民および心配している日本や世界の人々に見せていただきたいと思います。

日本には「表現の自由」を守る意思があるのか、それとも「表現の不自由」が定着するのか、世界が注目しています。「表現の不自由展・その後」の再開に向けて、脅迫犯らを検挙し、多くの来館者が多様な意見や表現について考える場の安心・安全を確保することは必須です。異なる意見を暴力で弾圧するのではなく、人権を守り、多様な意見を尊重する社会の実現をめざして、愛知県および愛知県警察がその本来の責務を果たすことを求めます。

2019年8月5日
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)
東京都新宿区西早稲田2-3-18 AVACOビル2F